広島大、東京女子医科大で
日本医療研究開発機構(AMED)は6月16日、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に整理統合し、医師やスタッフ間で共有できる「スマート治療室」の「最終目標モデル(プロトタイプ)」が東京女子医科大学に、「基本仕様モデル」が広島大学(広島大学病院)に完成したことを発表した。東京女子医科大学では各種医療機器の連携・接続の実証を、広島大学病院では、実際の患者への適用についての検証を開始するとしている。
画像はリリースより
現状、手術などの現場では、多種多様な医療機器から発生する膨大な情報を医師やスタッフが限られた時間内に判断しつつ治療を行っている。AMEDは、こうした治療の現場においてIoTを活用して各種医療機器を連携・接続させることで、スマート治療室の開発を世界に先駆けて進めてきた。
治療現場で使用されるさまざまな医療機器は、患者の状態をリアルタイムでモニタリングするもの(呼吸、心拍、体温)、患部の状態を診断するもの(顕微鏡、MRI、超音波診断など)、治療を行うもの(電気メスなど)、さらには手術者の動作等を補助・支援するもの(治療器具の手渡し、手ぶれの補助など)など、機器ごとにさまざまな種類の情報を収集・提供(表示)している。
産業用ミドルウエア、医療機器に活用
こうした情報は、治療現場外のサポートにも共有されることで治療の精度や安全性が高まることが期待され、さらに、ビッグデータとしての「時系列の治療記録」として管理することでより高度な解析も可能となる。また、保守・管理の面でも、単純な操作ミスの防止やコスト管理(稼働時間の短縮、電気使用の低減)に大きなメリットをもたらすとしている。
実際に使用される医療機器は製造者が異なるとそれぞれに仕様も異なり、それらを連携させることは困難。一方、治療現場よりもはるかに多数・多様な作業機器が存在する工場の現場では、それらを統合的に制御・管理するためにミドルウエア(ソフトウエア)を有効に活用している。
今回のプロジェクトでは、こうした産業用のミドルウエアを医療機器の連携・接続にも活用することを目指し、治療に及ぼす影響を十分に考慮しながら、医療機器に適用される各種の規制への対応の必要性についても検討を進めている。両大学に設置した治療室モデルは、「機器」「ミドルウエア(ソフトウエア)」「治療」を連動させて開発を進めるためのプラットフォームになるとしている。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース