凝固第X因子-プロテアーゼ活性化受容体2経路の役割に着目
東北大学は6月15日、血液凝固による糖尿病性腎症の増悪機序を明らかにし、新しい治療標的を同定したことを発表した。この研究は、同大学大学院薬学研究科の髙橋信行准教授、佐藤博教授、大学院医学系研究科の伊藤貞嘉教授、大江佑治研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓協会学会誌「Arteriosclerowsis, Thrombosis, and Vascular Biology」の電子版に6月9日付で掲載された。
画像はリリースより
日本では、糖尿病性腎症の患者数が年々増加している。食事・運動療法や降圧剤をはじめとした既存の治療法では十分とは言えず、透析導入の最も多い原因疾患とされている。心血管合併症のリスクも高いことから予後不良であり、 その進行や合併症を防ぐ新規治療の開発が急務の課題となっている。
これまでの研究で、血液凝固因子は「止血」という生理作用に加えて、プロテアーゼ活性化受容体の活性化を介して、さまざま様々な臓器傷害に関与することが知られているが、研究グループは、その中で活性化凝固第X因子-プロテアーゼ活性化受容体2経路の役割に着目した。
凝固第Xa因子阻害薬の糖尿病性腎症への応用に期待
まず、凝固第X因子阻害薬を糖尿病性腎症モデルマウスに投与したところ、尿中アルブミン排泄量や腎臓の組織傷害が改善していることが解明。さらに、プロテアーゼ活性化受容体2欠損糖尿病性腎症モデルマウスでも、同様の効果を確認した。培養細胞を用いた検討により、腎症の改善が炎症応答の抑制を介している可能性が示唆されたとしている。
すでに凝固第Xa因子阻害薬は、心房細動などによる血栓・塞栓症の予防薬として使用されており、糖尿病性腎症への応用が期待されるとともに、選択的プロテアーゼ活性化受容体2阻害薬は凝固阻害薬と比較して出血リスクが軽減すると想定され、その創薬研究の発展も望まれると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース