先天性心疾患術後肺動脈弁機能不全の43歳女性患者に対して
大阪大学は5月31日、同大学医学部附属病院にて、43歳女性の先天性心疾患術後肺動脈弁機能不全患者に対して、5月13日に新鮮脱細胞化ヒト心臓弁を使用した心臓弁移植手術を行い、5月30日に無事退院したと発表した。この手術は、同大学大学院医学系研究科外科学教室(心臓血管外科学)の澤芳樹教授らのチームによるもの。
画像はリリースより
細胞工学の手技を用いて作成された新鮮脱細胞化心臓弁は、移植後の拒絶反応が起きにくく、さらに、移植後にレシピエント自身の細胞が脱細胞弁に入り込み、生着して自己組織化することで弁の機能を維持することが報告されている。臨床においても、既存の他の人工弁との比較でも良好な成績が報告されている。
同大学では、ドイツ・ハノーファー医科大学との共同研究において、ドイツにて摘出、作成された脱細化心臓弁の安全性に関する共同臨床試験を開始し、2014年10月に日本初となる移植手術を行っている。
日本で提供された心臓弁用いた初の症例
今回行われた心臓弁移植手術は、大阪大学の臨床研究である「脱細胞化ヒト心臓弁の移植に関する安全性及び有効性の研究」の一環で、現在までに今回の患者を含めて計3例の移植手術が行われた。今回使用した心臓弁は、同大学にて行われた心臓移植の際レシピエントより提供されたものであり、日本で提供された心臓弁を用いた初めての症例となる。
この新鮮脱細胞化心臓弁は、他のデバイスと比較し再手術の必要性も減少することが考えられ、医療費の削減にもつながることが予想される。また、脳死下心臓移植時に摘出される心臓弁を用いた脱細胞弁を利用することは、医療資源の観点からも非常に重要であると考えられ、このような治療法の普及に一歩近づいた症例になるとしている。
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