健常な側の脳の働き
脳梗塞で失われた脳の機能はリハビリテーションである程度まで回復するが、回復の過程はまだ明らかにされていない。群馬大学と生理学研究所の共同研究グループは、機能回復期に障害を受けていない脳で行われている働きに注目した。
脳梗塞後2日から1週間で障害を受けていない反対側の脳が活性化する。そして神経回路の再編成後、健常な脳が障害を受けた脳の役割を担うことで機能の回復が起きていると以前に研究グループは報告した。今回は、脳の働きが活性化している過程でグリア細胞(神経細胞の働きを助ける細胞)が重要な働きをしていることを解明した。
グルタミン酸の調整をするグリア細胞
脳梗塞時に健常な側の脳は神経回路を再編成するために、興奮性の神経伝達物質、グルタミン酸を大量に放出する。この濃度が高すぎると神経細胞を傷害することが知られている。
研究グループは生きたままの状態で脳を観察できる二光子レーザー顕微鏡で神経回路の再編成時の神経細胞とその周りにあるグリア細胞の活動を観測した。その結果、グリア細胞の活動が高まっていた。グリア細胞はグルタミン酸の回収を行っているが、この活動を抑制した場合、機能回復は起こらなかった。つまり、グリア細胞はグルタミン酸濃度を調整するという機能回復に欠かせない働きをしていることがわかった。
研究で明らかにしたことは
1.脳梗塞後の機能回復に健常な側の脳の働きが重要であること
2.その働きにおいてグリア細胞が重要であること
3.グリア細胞は神経細胞の一過性の過剰興奮を抑制して脳を保護していること
2.その働きにおいてグリア細胞が重要であること
3.グリア細胞は神経細胞の一過性の過剰興奮を抑制して脳を保護していること
グリア細胞を標的にした研究の進展で効果的な治療法が期待できる。研究グループはグリア細胞の働きを効率よく活性化する新薬を開発していく予定だ。(馬野鈴草)
▼外部リンク
生理学研究所
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