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視床下部過誤腫の原因は脳になる細胞「GLI3」「OFD1」の突然変異-浜松医科大ら

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2016年03月29日 PM03:30

薬剤抵抗性のてんかん発作の原因となる視床下部過誤腫

)は3月25日、将来的に脳になる細胞に生じるGLI3およびOFD1の変異が、薬剤抵抗性のてんかん発作を引き起こす視床下部過誤腫の原因となることを発見したと発表した。この研究は、浜松医科大学医化学講座の才津浩智教授、横浜市立大学遺伝学講座の松本直通教授、西新潟中央病院の亀山茂樹先生、園田真樹先生らの共同研究グループによるもの。同成果は、米国神経学会のオープンアクセスジャーナル「Annals of Clinical and Translational Neurology」に同日付けで掲載されている。


画像はリリースより

視床下部過誤腫は、自律神経機能の調節を行う視床下部に、先天的な奇形(過誤腫)が生じる疾患。ほとんどが、患者以外の家族には発病者がみられない孤発例であり、一部は他に手足や口腔の奇形を合併するパリスタ・ホール症候群や口顔面指症候群の一症状として認められる。日本での患者数は不明で、北欧では20万人に1人と推定されている。

これまでに、将来的に脳になる細胞に変異が生じ、それが原因となって過誤腫ができる可能性が示唆されていた。過誤腫は脳組織とよく似た組織を有しており、過誤腫本体がてんかん発作の焦点になることがある。そのため、薬剤抵抗性のてんかん発作の原因となり、またてんかん発作が続くことにより精神発達遅滞や行動異常が認められるため、早期の治療が必要になる。視床下部は脳の深いところに位置するため外科手術が困難だったが、西新潟中央病院の亀山先生らが開発した定位温熱凝固術等の治療法の開発によって外科手術が可能になっていた。

形態形成に重要なShhシグナルの障害と視床下部過誤腫の関係が明らかに

今回、研究グループは、視床下部過誤腫の原因を探るため、定位温熱凝固術施行時に採取した過誤腫組織と血液白血球からDNAを採取し、両者の遺伝子配列を比較することで過誤腫組織のみに認められる遺伝子変異を探索。その結果、2例でGLI3遺伝子の、3例でOFD1遺伝子の過誤腫組織特異的な(血液白血球にはない)変異を同定したという。

GLI3とOFD1遺伝子は、パリスタ・ホール症候群や口顔面指症候群の原因であり、GLI3は形態形成に重要な役割を果たしているShh(ソニックヘッジホッグ)シグナルを受けて標的遺伝子の転写を調節し、OFD1はShhシグナル調節の場である繊毛の形成に重要な役割を果たす。今回の実験により、見つかったGLI3遺伝子変異体が下流の標的遺伝子の転写を抑制していることが強く示唆される結果が得られたという。

また、OFD1遺伝子はX染色体に位置するが、OFD1変異は男児(X染色体が1本)の過誤腫でのみ同定されたことから、GLI3遺伝子の変異によりOFD1遺伝子の機能が著しく低下することが予想される。また、5名の患者は、1名を除いて手足や口腔の奇形が認められなかったことから、将来的に脳になる細胞の一部にGLI3あるいはOFD1遺伝子の変異が生じることでShhシグナルが障害され、手足や口腔の異常といった全身の異常を伴わない形で視床下部過誤腫が形成されることが示唆されたという。

同研究成果は、視床下部過誤腫の病態解明に貢献し、効果的な治療法の開発に寄与することが期待される。

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