心筋梗塞の既往歴を有する患者の発症後1年以降の延長治療を適応として
英国のアストラゼネカは2月19日、欧州連合(EU)において、心筋梗塞発症後1年以上経過し、アテローム血栓性イベントの再発リスクが高い患者の治療薬として、「チカグレロル」(欧州での製品名:BRILIQUE)の新用量である60mgに販売承認が付与されたことを発表した。
同剤は、急性冠症候群(ACS)に対する経口抗血小板薬。シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類され、P2Y12受容体に直接作用する。同剤は血小板活性を阻害することで効果を発揮し、ACS患者において心筋梗塞あるいは心血管死を含む血栓性心血管イベントの発生率を低下させることが示されおり、欧州での製品名であるBRILIQUEはアストラゼネカグループの登録商標。日本国内では未承認となっている。
同剤の90mgはすでに、ACS成人患者におけるアテローム血栓性イベントの発症抑制を適応としてEUで承認されている。ACSイベント発症後最初の1年間のACSの管理における同剤の推奨維持用量は、90mg1日2回投与。今回の承認により、発症後1年以上経過している心筋梗塞の既往歴を有する患者は、アスピリン1日維持用量75~150mgと、同剤の低用量60mgを1日2回投与する併用療法を継続することができる。
2万1,000例超を対象とした臨床試験結果に基づき
今回の承認は、2万1,000例超の患者を対象とした大規模アウトカム試験であるPEGASUS TIMI-54試験の結果に基づいたもので、その結果は2015年3月の米国心臓病学会議で発表され、「The New England Journal of Medicine」に掲載された。
同試験では、試験への組み入れ前1~3年の間に心筋梗塞の既往歴がある患者を対象に、チカグレロルと低用量アスピリンとの併用を、プラセボと低用量アスピリンとの併用と比較して、心血管死、心筋梗塞および脳梗塞の長期にわたる二次的な発症抑制効果を評価した。
その結果、チカグレロルはプラセボに比べて心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合主要評価項目を有意に低減したことが示された。3年時の複合イベント発症率は、チカグレロル60mg群で7.77%、プラセボ群で9.04%だったとしている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース