副交感神経活動の回復遅れ、心臓突然死のリスク高める
東北大学は2月10日、同大学大学院医学系研究科内部障害学分野の小川佳子助教、上月正博教授らの研究グループが、心拍変動解析を用いて音楽が運動後の自律神経活動に良い効果をもたらすことを科学的に実証したと発表した。研究成果は米国科学誌「PLoS ONE」オンライン版に2月4日付けで掲載された。
画像はリリースより
運動は、健康の維持や増進に加えて、生活習慣病や心疾患の予防・治療に有用といわれている。運動を行うと、短期的には交感神経活動が増加したり副交感神経活動が低下したりするが、この変化は運動後しばらくして回復する。心大疾患患者は運動を習慣的に継続することで、自律神経活動のアンバランスが改善するが、副交感神経活動の回復反応の遅れは運動後の致死性の不整脈の発生や心臓突然死のリスクを高めるため、運動後の副交感神経活動の回復を高めることは重要な課題となっている。
一方、音楽には、自律神経活動を調整する効果を有しているといわれており、特に気分を落ち着かせるような音楽は、副交感神経活動を高めることが明らかになっている。そこで、研究グループは、気分を落ち着かせるような音楽を聴きながら運動を行えば、運動後の副交感神経活動を高めることができるのではと考えたとしている。
さまざまな疾患に対する新しいリハビリプログラムの確立に期待
研究では、若年健常者に対して、何もしないで座っている(安静セッション)、被験者自身が選んだ気分を落ち着かせるような音楽を聴きながら座っている(音楽セッション)、「ややきつい」と感じるくらいの自転車こぎ運動を行う(運動セッション)、音楽を聴きながら自転車こぎ運動を行う(併用セッション)という4つのセッションをそれぞれ別の日に15分間行い、セッション前後の自律神経活動を、心拍変動解析ソフトを用いて測定して比較した。
その結果、音楽セッションではセッション終了後の副交感神経活動が有意に増加し、運動セッションではセッション終了後の副交感神経活動が有意に低下していたが、音楽を聴きながら運動した併用セッションでは、セッション終了後の副交感神経活動は介入前の値とほぼ同じになった。これは、被験者自身が選んだ気分を落ち着かせるような音楽が運動による副交感神経活動の低下を和らげたことを意味するとしている。
この研究成果より、音楽と運動を併用することで安全に運動を実施できることが明らかになった。また、音楽と運動の併用療法を長期的に繰り返すことにより音楽療法あるいは運動療法単独よりもより大きな効果が得られる可能性も考えられ、さまざまな疾病に対する新しいリハビリテーションプログラムの確立につながることが期待されると研究グループは述べている。
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