従来の手法では、複数の治療薬併用時の評価難しく
熊本大学は1月26日、虚血性心疾患、心房細動などの不整脈や、深部静脈血栓症などで抗血栓薬を服用中の患者において、国産の新しい測定装置「Total thrombus-formation analysis system(T-TAS)」を用いて血栓形成能(血栓のできやすさ)を測定することが薬効の評価や出血リスクの予測に有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院生命科学研究部循環器内科学の海北幸一講師らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
抗血栓薬は、心臓病や脳卒中の予防・治療に広く用いられている。しかし、これまではこれら多くの抗血栓薬の効果はそれぞれ異なる手法によって評価されており、一度に複数の治療薬を併用している場合などには、患者の状態に応じた一様な評価が難しかった。中でも新規経口抗凝固薬に関しては適切な効果判定法もなく、薬が安全で有効かどうかを確実に判断できなかった。
出血性合併症の指標にもなる可能性
T-TASとは、新しい血栓形成能解析システムで、血管を模したマイクロチップと検体(採血した血液)を送り出すポンプ、圧力センサー、光学顕微鏡で構成されるモニタリング装置。採血した血液は測定までに煩雑な前処理が不要で、しかも必要な試料は500μLと少量で済む点が特長となっている。チップ上に流れる血液が模擬血管に血栓を形成していく様子を実際に見ることができ、血栓ができる速さや量を定量的に評価することが可能。得られる結果は、凝固因子の活性反応を中心に測定するAR値と、血小板の活性化を中心とした血栓形成を測定するPL値の2つがある。
研究グループは、このT-TASを用いることで、これまで抗凝固効果の判定が困難であった新規経口抗凝固薬の効果や、虚血性心疾患患者が飲んでいる複数の抗血小板薬の効果をひとつの検査機器で評価できることを明らかにした。さらに、T-TASの測定結果は出血性合併症の指標にもなりうることが示され、一連の報告は抗血栓薬の種類、投与量の調節や、出血・血栓性疾患の新たな管理指標として用いられることが期待できるとしている。
なお、最新の研究成果は「Journal of Thrombosis and Haemostasis」オンライン版に米国時間の1月16日付けで、「Journal of the American Heart Association」オンライン版に米国時間の1月25日付けで掲載された。
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