始原生殖細胞への分化効率90%以上
北海道大学は1月12日、生殖細胞である卵子・精子のもととなる「始原生殖細胞」への分化をコントロールする、新たな遺伝子を発見したことを発表した。これにより、高価なたんぱく質を用いずに、身体のいかなる細胞にもなれる性質(多能性)を持つ ES細胞(胚性幹細胞)から始原生殖細胞への分化効率が90%以上という画期的な手法を確立したとしている。
画像はリリースより
この研究は、同大学大学院先端生命科学研究院の村上和弘助教らの研究グループによるもの。研究成果は、英「Nature」誌のオンライン速報版に、英国時間の1月11日付けで掲載された。
研究の背景として、始原生殖細胞は、多能性細胞を分化させて作ることができるが、高価なたんぱく質を必要とするうえ、その分化効率が約40%であることから、多くの時間と費用がかかることが課題だった。
動物種でより一層の効率化も
新手法の主役となっているのが「Nanog遺伝子」で、この遺伝子が働くと、NANOGたんぱく質をつくる。研究グループは、このNANOGたんぱく質が連鎖的に別の遺伝子を働かせることで始原生殖細胞への分化に必要十分な3つのたんぱく質を発現させることを解明した。
研究グループによると、一般的な自然交配によるマウスの世代交代には約80日かかり、マウスが多数必要で維持していくためのコストもかかった。それに比べ、生体外での始原生殖細胞誘導を用いると、一度ES細胞を樹立してしまえば無限に始原生殖細胞が得られ、遺伝子改変も容易で凍結保存も可能。ES 細胞から約40日という短期間で次世代の受精卵を得ることができる。
今回の発見によって、ES細胞から始原生殖細胞への分化効率が格段に上がるため、安定的に始原生殖細胞を得られるようになり、動物実験の効率化とコストの軽減が見込める。さらに、マウスだけでなく一世代が長い動物種ではより一層の効率化が期待されるとしている。
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・北海道大学 プレスリリース