医師の当直は時間外労働
奈良県立奈良病院の産婦人科医2名が、宿日直勤務は、割増賃金が支払われる「時間外労働」に当たるなどとして、時間外手当の支払いを県に求めていた裁判は、県の上告を退け約1500万円の支払いを命じる判決が最高裁で確定した。
この2名は、平成16年1月1日から平成17年12月31日までの宿日直勤務の間は、分娩やハイリスク妊娠患者に対する診療、救急外来患者に対する診療を行っており、労働基準法37条1項の時間外又は休日勤務に当たると主張。
また、この期間中、同病院の産婦人科では、この2名を含む5名の医師が勤務していたが、当直の医師1名では、急患などの対応ができないため、宿日直勤務以外に自主的に「宅直」当番を決めていた。
「宅直」当番の医師は、宿日直の医師だけでは対応が困難な場合、病院に駆けつけ宿日直医師に協力し診療を行っていた。この「宅直勤務」についても、割増賃金の対象となる労働時間に値すると主張していた。
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求められる労働環境の改善
平成22年4月の一審では、「宿日直勤務」については時間外割増賃金の支払いを命じ、「宅直勤務」については時間外労働として認めなかった。
そのため双方が控訴。続く二審の大阪高裁も一審判決を支持し「当直は労働時間」と認定、県側と原告双方の控訴を棄却。一審と同様「宅直勤務」については、認めなかった。その後、県は平成22年11月に最高裁に上告していた。
奈良県では、独自に定めた条例の中で、断続的な勤務として
を定めているので、当直勤務は時間外労働に当たらず、また、
と反論していた。
休む間もなく働き続ける状態の当直
これに対し、一審・二審では、医師らは異常分娩や異常妊娠等に対する診療も昼夜を問わず多く、平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間、宿日直勤務時間中の24%の時間を通常業務に従事していたと指摘。
また「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは、
を指すのであって、この医師らのように、分娩・新生児・異常分娩治療、救急医療などを行う状態については、「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは言えないと指摘していた。(吉沢実香)
▼外部リンク
平成18(行ウ)第16号 時間外手当等請求事件
平成21年04月22日 奈良地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090703144644.pdf
医師の宿日直勤務と労働基準法
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/s0425-6a.html