パブリックコメントへの対応で6月公表予定から大幅に遅れ
日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を発行。都内でプレスセミナーを開催した。当初は、2015年6月の同学会学術集会に合わせた発行を予定していたが、4月にガイドライン案のパブリックコメントを募集したところ、158件(学会8件、研究会・団体2件、医師85件、薬剤師6件、薬学部・薬理学教員3件、看護師1件、介護職8件、製薬会社7件、登録販売者1件、一般37件)のコメントがあり、それを受けた各論の修正及び再審議に大幅な時間を費やした。
ガイドライン作成WG委員長で
日本老年医学会副理事長の秋下雅弘氏
「ストップ」は「特に慎重な投与を要する」「開始を考慮するべき」
高齢者の潜在的に不適切な処方のスクリーニングツール(Screening Tool of Older person’s Potentially inappropriate Prescriptions)のそれぞれの頭文字である「STOPP」を、「ストップ」と表記。「“スタート”と“ストップ”という2分法と語法が誤解を招き、不適切である」(日本神経精神薬理学会、日本臨床精神神経薬理学会のパブリックコメントより)と指摘された薬物リストの名称については、禁止薬と誤解して処方しなくなったり、患者が自己判断で薬剤を中止したりすることのないよう、それぞれ「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」「開始を考慮するべき薬物のリスト」と言い換えられた。さらに、フローチャートを含めたリストの使用方法と説明を追加している。
重度のBPSDに対する抗精神薬使用についても加筆
重度のBPSDに関しては、「緊急度の高いBPSDに対しては抗精神病薬の使用が慎重に検討される」と表記。さらに。日本神経学会「認知症治療ガイドライン」、厚生労働省「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」、社会保険診療報酬支払基金「医薬品の適応外使用に係わる保険診療上の取り扱い」平成23年9月第9次提供事例を引用して加筆している。
全ての漢方薬が全体版リストから削除され別添リストへ
4月の原案から最も大きな変更となったのは漢方薬だ。すべての薬物とCQについて、個々の試験内容を再検討し、ワーキンググループ内で再判定を行った。その結果、いずれも規定の8割以上の合意が得られず、リストから削除された。しかしながら、高齢者に日常的に使われている状況を鑑み、新たにエビデンスと推奨度を附記しないリストを作成。そこに漢方薬を記載している。
また、同セミナーでは、2016年春の公表を目指して、日本糖尿病学会と合同で高齢者糖尿病治療ガイドラインの作成に向けて協議を続けていることも発表した。