蛍光タンパク質と発光タンパク質をハイブリッドしたナノランタン
大阪大学、北海道大学、京都大学の共同研究グループは開発した発光タンパク質Nano-lantern(ナノ-ランタン)でマーキングしたマウス体内のがん組織を検出することに成功した。
ノーベル化学賞の下村脩氏がオワンクラゲから発見した蛍光タンパク質により細胞、組織など生理現象を観察するライブイメージング技術が普及している。一方、蛍光観察には細胞に毒性のある紫外線照射が必要だったため、勃起光照射を使わないホタルなどの生物発光の利用が注目されたが蛍光に比べて暗く実用されなかった。
研究グループは発光タンパク質(ルシフェラーゼ)の明るさを改善する工夫を重ねる中で、発光生物の発光器官内の「生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)」を利用して発光の効率を上げることを着想した。BRETは光の放出に使うエネルギーを近接する蛍光タンパク質に移動する現象で、発光タンパク質ではなく蛍光タンパク質が光を放出し、その結果、発光量が増える。そこで発光タンパク質と蛍光タンパク質から融合タンパク質を作成、ルシフェラーゼの10倍以上で発光するこの融合タンパク質をナノランタンと名付けた。
体内の組織、生理機能を高感度に検出
今回ナノランタンを発現させたがん細胞をマウスに移植し、生物発光で検出されたがん細胞をビデオレートで撮影した。ナノランタンの使用によって、手術や長時間の露光撮影を行わずにがん細胞の成長・転移や抗がん剤の評価が可能になると考えられる。
将来的には例えば細胞の活動やタンパク質の機能を光で制御する「光遺伝学的技術(オプトジェネティクス)と組み合わせて神経活動の操作と計測を同時に行えば高次神経活動(行動・思考・記憶)のメカニズム解明につながる。疾病の原因究明、創薬のスクリーニングに貢献することが期待される。(馬野鈴草)
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大阪大学プレスリリース
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