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トリサルファイドが脳内でも生合成されることを世界で初めて発見-NCNP

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2015年10月09日 PM01:15

硫化水素からも生成されるトリサルファイドが3MSTによって生合成

)は10月7日、同神経研究所の木村英雄神経薬理研究部長らのグループが、脳内でトリサルファイド(H2S3)が、3-メルカプトピルビン酸イオウ転移酵素(3MST)によって、3-メルカプトピルビン酸(3MP)から生合成されることを発見したと発表した。H2S3は、ニンニクの有効抽出成分であるジアリルトリサルファイド(DATS)やジメチルトリサルファイド(DMTS)と同様のトリサルファイド類。


画像はリリースより

研究グループは、脳内で硫化水素(H2S)よりS原子の数が多いポリサルファイドH2Sn(n=3,4)が脳神経細胞のひとつであるアストロサイトを活性化し、細胞内Ca2+流入亢進を行うことを2006年に世界に先駆け発表。2013年には、これが脳内に存在し、記憶や痛みの伝搬にかかわるTRPA1チャネル(カルシウムイオンチャネル)がその標的分子であることを引き続き報告していた。その後、ポリサルファイドが神経分化促進、抗高血圧、抗酸化ストレス制御、がん抑制因子も制御することが報告されていたが、H2Sn中のS原子の数や、生合成経路の有無、そしてその原料物質あるいは基質は不明だった。

抗不安薬や抗疼痛薬の開発進展にも期待

同研究グループは、ポリサルファイドH2Snが脳に存在することを2013年に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って発見していたが、今回は、質量分析(LC/MS/MS)を駆使し、H2SnのS原子の数を決定。さらに、その合成酵素を明らかにした。

脳においては、H2S3とH2Sが主生産物で、少量ながらH2S2やH2S5も検出され、その生産酵素は、3MSTで、3MPから合成された。さらに、H2Snに選択性の高い蛍光プローブを使い、生合成されたH2S3が神経細胞の細胞質に局在することがわかったという。

中枢神経系では、H2S3の生産酵素である3MSTの欠損マウスが不安症状を示し、H2S3によって活性化されるTRPA1チャネル欠損マウスでは、抗不安作用が報告されている一方、末梢神経系においては、TRPA1チャネルは痛みを伝搬することが分かっている。これらのことから、同研究成果は抗不安薬や抗疼痛薬開発への進展が期待される。また、ニンニクの健康増進効果はH2S3を補うことによる効果である可能性も示唆された。

なお、同研究成果は、英オンライン科学雑誌「Scientific Reports」に10月6日付で掲載されている。

▼関連リンク
国立精神・神経医療研究センター プレスリリース

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