日本においても発症者・死亡者が急増している前立腺がん
東京大学は9月29日、同大医学部附属病院22世紀医療センター抗加齢医学講座の井上聡特任教授と同病院老年病科の高山賢一助教が、同病院泌尿器科などと行った共同研究で、前立腺がんのホルモン療法耐性に至る新しい仕組みをエピゲノムの観点から世界で初めて明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
前立腺がんは、欧米では最も頻度の高いがん。日本においてもその発症者、死亡者は急激に増加しており、男性の健康上の重要な問題となっている。男性ホルモンであるアンドロゲンの作用は前立腺がんの発生、進展を担っているため、アンドロゲンの働きを抑える薬を投与するホルモン療法が広く普及しているが、ホルモン療法に対する耐性を獲得して治療が効かなくなることが大きな問題となっていた。
3段ロケット方式のエピゲノム指令でがんが悪性化することが明らかに
今回、研究グループは、アンドロゲン受容体が強く発現している前立腺がんモデル細胞を用いてホルモン療法耐性化のモデルがん細胞を作製。ホルモン療法が効く細胞と効かない細胞間での遺伝子発現、アンドロゲン受容体の結合部位の変化について次世代シーケンサーを用いて解析した。
その結果、アンドロゲンの作用やホルモン療法の抵抗性の獲得に伴い活性化されるマイクロRNAが、3段階の過程を経て第6の遺伝暗号といわれる「5hmC」をマークするエピゲノム状態を変化させ、がんの悪性化に関わっていることが明らかになったという。
今後も同研究グループは、さらに大規模な患者検体を用いた解析によりヒドロキシメチル化とがんの悪性度について検証を行う予定。研究が進めば、ホルモン療法が効かなくなった難治がんの新たな治療戦略の確立に役立つものと期待が持たれる。なお、同研究成果は、9月25日付けで科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
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