リスクを増大させるBZ受容体作動薬の高用量・多剤処方
医療経済研究機構は8月21日、奥村泰之主任研究員らが行った、抗不安・睡眠薬の高用量・多剤処方に対する診療報酬改定の効果に関する研究成果を発表した。同研究成果は、「臨床精神薬理18巻9号」(8月20日)に掲載された。
画像はリリースより
さまざまな臨床現場で処方されている抗不安薬や睡眠薬は、その多くが「ベンゾジアゼピン受容体」に作用する種類 (BZ受容体作動薬) で、それらの作用機序、有効性や副作用は共通している。BZ受容体作動薬の高用量・多剤処方は、精神科外来において高頻度にみられ、作用時間の異なる薬剤の組み合わせであっても、多剤処方の効果を支持するエビデンスはない。
その一方で、依存、骨折、交通事故や死亡などの副作用の発生リスクは、用量依存的に上昇することが明らかになっており、有効性と副作用増大のバランスで見た場合、BZ受容体作動薬の高用量・多剤処方は、リスク増大が先行していると考えられている。
2.1%の患者に最高臨床推奨用量の3倍を超える用量が処方
厚労省は、抗不安・睡眠薬の高用量・多剤処方の適正化に向けて、2012年度診療報酬改定において、抗不安薬または睡眠薬の剤数が2剤以下の場合と、3剤以上の場合に分けて評価する減算規定を新設。これにより、3剤以上処方されている場合、精神科継続外来支援・指導料が20%減算されている。
さらに、2014度診療報酬改定により、3剤以上処方されている場合、この精神科継続外来支援・指導料を算定しないなど、減算規定も強化。2014年度の減算規定は、減薬に必要な期間を設けるため同年10月1日より適用されている。
このような施策が推進される中、同研究グループは、抗不安・睡眠薬の高用量・多剤処方の割合が、診療報酬改定前後 (2011年4月~2014年11月) の精神科外来において、どのように変化したかを検討。その結果、BZ受容体作動薬群が、依然として2.1%の患者に対して最高臨床推奨用量の3倍を超える用量が処方されていることが明らかとなった。
診療報酬改定における多剤処方への減算は、減算対象薬である抗不安薬と睡眠薬それぞれの多剤処方への減少効果は認められたものの、BZ受容体作動薬の高用量・多剤処方への減少効果は限定的であったため、BZ受容体作動薬の減少施策の推進が必要であることを示唆している。
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・医療経済研究機構 プレスリリース