RORC遺伝子の先天的な異常が免疫系の障害を
広島大学は7月31日、慢性粘膜皮膚カンジタ感染(CMC)とマイコバクテリアに対する易感染性を合併する原発性免疫不全症の原因となる遺伝子の同定に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬保健学研究院 小児科学の岡田賢講師と、同研究院の小林正夫教授、米ロックフェラー大学のJean-Laurent Casanova教授らと共同で行われた。研究成果は米科学誌「Science」オンライン版に、7月9日付で掲載されている。
画像はリリースより
先天的な免疫疾患である原発性免疫不全症は、障害される免疫担当細胞の種類や部位により200近くの疾患に分類される。同疾患の発症原因や予後、病態については、未解明な部分が多かった。
同研究グループが、近親婚の3家系7人の患者に対し遺伝子解析を行った結果、全員が、ヘルパーT細胞に属するTh17細胞のマスター転写因子である「RORC遺伝子」のホモ接合性変異を有していることがわかった。同定されたRORC遺伝子変異は、機能が完全に失われるタイプの変異だったという。このRORC遺伝子の機能が欠損した(RORC-/-) 患者は、IL-17を産生するT細胞が欠損しており、このことがCMC発症の原因と考えられた。
マイコバクテリア感染に対してのIFN-γの投与が有用である可能性
一方、RORC-/-患者におけるマイコバクテリアに対する易感染性は、マイコバクテリアに対する抗原特異的な IFN-γ産生障害に起因していることがわかった。
RORC遺伝子異常による原発性免疫不全症の発見により、カンジダに対する粘膜免疫、マイコバクテリアに対する全身性免疫応答にRORC遺伝子が必須であることが判明。さらに、患者におけるマイコバクテリア感染にIFN-γの投与が有用な可能性が見いだされた。
今回の発見は、RORC異常による原発性免疫不全症の解明とともに、今後、治療法の確立につながると期待が寄せられている。
▼関連リンク
・広島大学 ニュースリリース