光コヒーレンストモグラフィー(OCT)といえば、網膜の検査などに日本でも一般的に用いられている画像診断です。
この検査で、多発性硬化症(MS)の早期発見が出来る可能性が発表されたことを、BBCが報じました。調査を行なったのは、ジョンポプキンズ大学のチーム。論文は専門誌Neurologyに論文が掲載されました。
MSは、脳や脊髄の神経を保護するミエリン(髄鞘、ずいしょう)が炎症によりダメージを起こす病気で、国内では10万人に8~9人見られています。多くが急に発症し、神経系に影響があらわれて、運動や視覚に異常を訴えます。
憎悪と寛解を繰り返すタイプ、時間と共に悪化するものや、ほとんど変わらないものなど、数種類のタイプがあるとされています。
調査では、164人のMSの患者さんの網膜を2年間にわたってOCTで検査しました。すると、MSの症状がはっきりと見られる人ほど、網膜が薄くなっていることが分かったのです。また、再発を繰り返しながら悪化していくタイプにかかっている患者さんでは、再発や症状の進行がないタイプの人よりも早くに網膜が薄くなるそうです。
網膜の神経は脳や脊髄のそれと違い、もともとミエリンがなく、むき出しの状態です。調査チームがこの部分に着目したのは、ミエリンに保護されていない分だけ、症状が早く出るのではないかと推測したからです。そして、その推測はおそらくは正しいものだったようです。今回の調査は、実数が少ないので今後の追跡が必要ですが、概要は受け止められています。
MSの多くは慢性病に移行しますが、早期に発見して適切な治療を行うことで、症状の進行を遅らせることは可能です。患者さんの身体的・精神的負担、そして時間や費用から考えても手軽なOCTが検査法として確立することは意義があることと言えるでしょう。
▼外部リンク
BBC News ; Simple eye scan can reveal extent of Multiple Sclerosis
http://www.bbc.co.uk/news/health-20836082
難病情報センター 多発性硬化症
http://www.nanbyou.or.jp/entry/145
Neurology
http://www.neurology.org/content/80/1/