LPS混入検査に欠かせないリムルス試薬
九州大学は7月28日、同大大学院理学研究院の川畑俊一郎主幹教授と小林雄毅学術研究員らの研究グループが、カブトガニ体液凝固B因子の組換えタンパク質調製に初めて成功し、その活性化機構を解明したと発表した。同研究成果は、米国際学術誌「The Journal of Biological Chemistry」のオンライン速報版に6月24日付で掲載され、7月31日に確定版が掲載される予定。
画像はリリースより
細菌の細胞壁を構成するリポ多糖(LPS)は、人間の免疫系が感染菌を認識する際に標的とする重要な物質だ。LPSは比較的安定な物質で環境中に広く存在し、注射液や透析液へ混入すると過剰な免疫反応を引き起こす原因となり、重篤な場合はショック状態を引き起こす。
医薬品へのLPS混入検査には、カブトガニの血球抽出液がLPSに鋭敏に反応して凝固する性質を利用したリムルス試薬が広く世界中で利用されている。しかし、カブトガニの個体数の減少によって、血球抽出液が不足しており、これに対応する策が求められていた。
リムルス試薬の原材料不足に対応する代替原料実用化に一歩前進
研究グループは、2014年9月にカブトガニの凝固カスケード反応の開始因子であるC因子の高機能組換えタンパク質の調製に成功。今回、調製したB因子の組換えタンパク質は、LPSによって活性化したC因子によって活性化し、天然のB因子と同等の活性を有していることを明らかにした。
一方、LPSとC因子の複合体形成がB因子の活性化において重要であることが判明。B因子はアミノ末端側のクリップドメインと呼ばれる領域を介してLPSに結合することが明らかとなり、B因子の活性化はLPS上における局所的な反応であることがわかったという。
今回の研究成果により、カブトガニ個体数の減少によるリムルス試薬の原材料不足に対応可能な、組換えタンパク質による凝固カスケード反応の再構築に一歩前進した。これらの組換えタンパク質により、安定で活性の高い高機能因子を用いた凝固カスケード反応を再構築することで、高感度のリムルス試薬の実用化、さらには将来的なカブトガニ個体数の減少による血球抽出液の不足に対しても十分に対応できることが期待される。なお、同研究成果の実用化に向けた検討は、論文の共著者である生化学工業株式会社と開始している。
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