空腹時に食欲を創出する、新たなメカニズムを明らかに
自治医科大学は7月23日、空腹時に食欲を創出する新しい機構を明らかにした研究成果を発表した。この研究は、同大統合生理学の矢田俊彦教授、中田正範准教授と、国際医療福祉大学の栗田英治准教授らによるもの。研究成果は、米学術雑誌「American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism」6月号に掲載された。
食欲は、脳視床下部の弓状核によって全身のエネルギー状態が感知されることにより調節されている。しかし、弓状核でエネルギー状態を神経興奮に変換するメカニズムには、未解明な部分が多かったという。
視床下部弓状核NKAが空腹・低血糖を感知
研究グループはラットを用いた実験で、全身の細胞のイオン環境を維持して機能を支えるナトリウム‐カリウムポンプNa+,K+-ATPase(NKA)が、弓状核においては空腹・低血糖を感知し、食欲亢進性ニューロンを活性化して、摂食行動を引き起こすことを明らかにした。
報告によると、空腹時には低血糖(グルコース濃度低下)および食欲亢進性の胃ホルモンのグレリンの上昇により、弓状核のNKAの活性が低下。また、グルコース濃度低下は、弓状核ニューロンに作用してNKAを抑制して細胞を活性化し、またNKA阻害剤ウアバインも細胞を活性化したという。活性化された細胞の大部分は、強力な摂食亢進性神経伝達物質ニューロペプチドY(NPY)とアグーチ関連蛋白(AgRP)を持つ細胞だった。NKA阻害剤ウアバインを脳内/弓状核内へ投与すると、NPY亢進を介して摂食行動を引き起こし、一方NKA活性化剤を投与すると摂食行動を抑制したという。
これらの結果より、視床下部弓状核NKAが空腹・低血糖を感知して、NPY/AgRPニューロン活動を亢進し、摂食行動を起こす、新しい食欲創出機構が明らかになったとしている。同分子は、過食、肥満や糖尿病の新規治療ターゲットとなる可能性があるとして、期待が寄せられる。
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