がん免疫療法の問題を解決する可能性
理化学研究所は、がん抗原に反応するT細胞からiPS細胞を作製し、そのiPS細胞からがん細胞に反応できるT細胞への分化誘導に成功したと発表した。
この研究は、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)免疫発生研究チームの河本宏チームリーダー、免疫器官形成研究グループの古関明彦グループディレクター、ラウール ビスカルド特別研究員らの研究グループによるもので、米国の科学雑誌「Cell Stem Cell」に2013年1月4日号(オンライン版は1月3日:日本時間1月4日)に掲載されている。
(T細胞:Wikiメディアより引用)
キラーT細胞を大量に作り、がんを総攻撃
研究グループでは、ヒト悪性黒色腫特有の抗原に反応するキラーT細胞に山中因子(Oct3/4、Klf4、Sox2、c-Myc)の遺伝子などを用いてiPS細胞を作製。そのiPS細胞からT細胞を分化誘導したところ、生成したT細胞のほぼ全てが、元のがん抗原と反応できるT細胞レセプターを発現、さらに元のがん抗原に反応することが確認できた。
iPS細胞からの分化誘導を繰り返し、生成した全てのT細胞ががん細胞を攻撃できれば、現在がん免疫療法の壁となっているT細胞の少なさや寿命の短さの問題を解決できる可能性がある。
iPS細胞は、欠損した組織の再生による治療方法が対象となっていたが、この研究によりがん治療への応用についても可能性が出てきたと言える。
▼外部リンク
理化学研究所
http://www.riken.go.jp/r-world/info/
Cell Stem Cell
http://www.sciencedirect.com/science/