ステント留置と消化管穿孔
厚生労働省は26日、医療機器ステントによって消化管に穿孔があった事例を公表した。消化管用ステントは消化管の閉塞や狭窄を広げるために用い、食道用、胃十二指腸用、大腸用がある。
ステント留置後に消化管穿孔を生じた、または穿孔の疑いがあった事例は53件(うち死亡が16件)。食道用5件(同1件)、胃十二指腸用19件(同8件)、大腸用29件(同7件)。死亡に至ったのは腹膜炎などの発症による。
今回の報告には、放射線療法、化学療法のために、ステント挿入前にすでに脆弱化していた組織が穿孔したと考えられる例や、ステントとの因果関係がはっきりしない例も含まれる。しかし、がんの浸潤が著しい患者の場合、ステント留置が消化管穿孔のリスクを高めることは否定できない。
苦痛の少ないステント留置術
ステント留置術は消化管の閉塞の治療法としては新しい。国内では、食道用ステントが1995年、胃十二指腸用が2009年、大腸用が2011年に承認され、2010年に保険診療に適用された。
直径3㎝のメッシュ状の金属筒が内視鏡に納まるサイズの径3㎜まで細くなる。これを内視鏡ごと消化管に挿入し、取り出したステントを広げて留置する。治療にかかる時間は15分ほどと患者への負担が少ない。
また、他の対処法のバイパスに比べて、ステント留置後の経口摂取にかかる日数(1~2日)や在院日数(15~19日)が短い。一方で、再閉塞の発症、ステントの逸脱で再治療もある。
治療の対象となる患者の多くが、胃がんや膵がんなどの進行、転移で消化管の閉塞を抱えている。厚労省は、消化管用ステントの適用には、消化管穿孔リスクや他の対処方法の選択を考慮して慎重に判断するように呼びかけている。
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