シミックH副社長の中村氏「多様化するニーズにいかに応えるか」
シミックホールディングス株式会社は6月2日、プレスセミナー「国内における臨床開発の現状とCRO」を開催。同社代表取締役副社長 執行役員の中村宣雄氏、同じく取締役専務執行役員CROカンパニー長でシミック株式会社代表取締役 社長執行役員の好本一郎氏が登壇し、CRO業界を取り巻く環境の変化と同社の取り組みについて語った。
シミックホールディングス株式会社
代表取締役副社長 執行役員 中村宣雄氏
1992年、日本初のCROとしてシミックが業務を開始して以来、国内のCRO業界は右肩上がりに成長してきた。当時、製薬会社に勤めていた中村氏は「治験は医師との信頼関係でやっていたのに、それを委託することなんてあるのかと思っていた」と話す。現在、日本CRO協会に所属するのは28社、総売上高は1435億円まで拡大。「アウトソース化が進む中で、現在ではCROは無くてはならない存在になった」と、中村氏は業界が発展してきた理由を語った。
1997年の新GCP施行、そして2012年の薬事法改正による、委託できる業務範囲の拡大により、CROが担う役割はより大きくなった。さらに2014年には薬事法が改正され、薬機法となったことで、さらにCROが関わる分野は広がるとみられる。「今、CROにはすべてが委託できる時代。これは製薬会社と変わらない機能を持つということ。これはCRO会社にとってはチャンスだが、この拡大した業務範囲に対応する人材を育成しなくてはならない」と中村氏。
「日本は新薬開発で遅れをとっていたが、今やグローバルトライアルの時代。全世界で1つのプロトコルで、他国の患者さんと同じタイミングで良い薬を日本の患者さんにも届ける時代が来ている。オーファンドラッグ、再生医療と、新しい領域に開発品目は移行している。アカデミアとベンチャーの台頭もある中、多様化するニーズにいかに応えるかを考え、研鑽に励んでいる」(中村氏)
好本社長「一時的にCRAの枯渇ともいえる状態」
シミックホールディングス株式会社
取締役 専務執行役員CROカンパニー長
シミック株式会社 代表取締役 社長執行役員 好本一郎氏
続いて講演した好本氏は、「グローバル化とは、海外に出ていくことだけでない。ブロックバスターがない今、世界から見て日本は外せないマーケットになっている。治験のスピードも上がっており、魅力は増している」と語る。ただし、日本の基準は「国際基準を準拠しているがイコールではない」と好本氏。他国とは異なる状況で治験を進めざるを得ない現状に「医療機関をおさえなければ、治験は絶対に成功しない。この差を知るのが我々。この差を埋める業務をしていきたい」と語る。また、2013年度、シミックの受注額における内資メーカーと外資メーカーの割合が52:48だったのに対し、2015年度の4月現在では35:65にまで変化した。「日本のマーケットはグローバル化している。外資系への対応力も強化したい」(好本氏)
既存顧客が求める内容も変化しているという。「(ブロックバスターの減少により)リソースを創薬にシフトしなければならない。その分、アクティビティには固定費を持たずにアウトソースにするという流れにある」と好本氏。さらに、制がん剤やアルツハイマー治療薬など、より難易度の高い薬剤開発への移行もあり、好本氏は「一流のCROの、一流のCRAに対する重要が増え、一時的にCRAの枯渇ともいえる状態になっている」と語った。このような業界のニーズに応えるため、長期を見据えた人材の採用と育成を行っているという。
台頭するARO(Academic Research Organization)やベンチャー、改正薬機法によって新たなニーズが生まれた医療機器メーカーや再生医療分野の企業について、好本氏は「FDAが認可した新薬のうち、約6割がARO発のシーズをベンチャーがインキュベートしたもの報告もある。AROやベンチャーは素晴らしいシーズは持っているが、それを製品化するまでのノウハウや経験がない。包括的な力を持っている我々が力になれる」と語った。
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