血中アンジオテンシン濃度の調整に新たな知見
理化学研究所は5月8日、同科学総合研究センター発生神経生物研究チームの御子柴克彦チームリーダー、久恒智博研究員らの研究チームが、マウスを使った実験により、小胞体内腔タンパク質「ERp44」が血圧制御に重要な役割を果たすことを発見したと発表した。この研究成果は、米科学雑誌「Molecular Cell」オンライン版に5月7日付で掲載されている。
画像はリリースより
同研究チームは、ERp44の役割を明らかにするため、ERp44を欠損させたマウスを作成し調査。その結果、ERp44欠損マウスでは、血圧を上げる作用を持つアンジオテンシンIIの安定性が野生型マウスに比べて減少し、濃度が低下して低血圧を示した。
新たな血圧治療法につながると期待
さらに詳しく調べた結果、野生型マウスでは、ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)の1つで、アンジオテンシンIIを分解する「ERAP1(小胞体アミノペプチダーゼ1)」が、小胞体内腔でERp44とジスルフィド結合し、小胞体内腔に留まっていたという。
一方、ERp44欠損マウスでは、ERp44がないためERAP1が小胞体内腔に留まることができずに細胞外に多量に分泌され、その結果、血中のアンジオテンシンIIが分解され低血圧を起こすことが明らかとなった。また、症状の1つに血圧の急速な低下を示す敗血症のモデル実験では、ERp44とERAP1の結合が増加し、血圧低下を抑制することが分かったという。
今回の結果は、小胞体内腔に存在するERp44がERAP1の細胞の内外における局在を調節することでアンジオテンシン濃度を制御し、血圧を調節することを示唆する。今後、ヒトの血圧に、小胞体内腔の酸化還元状態やERp44-ERAP1相互作用がどのように関わるか明らかにすることで、それらを基盤とした血圧治療法に結びつくと期待される。
▼外部リンク
・理化学研究所 プレスリリース