遺伝子を直接狙い撃ちする方法を開発
京都大学は5月1日、難治性のKRASがん遺伝子変異を持ったがんに対する、新規の治療薬を開発したと発表した。この研究は、同大学大学院理学研究科の杉山弘教授、千葉県がんセンターの永瀬浩喜研究所長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に4月27日付けで掲載されている。
画像はリリースより
これまで、難治性のがん患者に効果的な治療法となる抗がん剤は、がんの原因遺伝子であるドライバー遺伝子をたたくことが重要であるとされてきた。研究グループは、がんに関わるたんぱく質ではなく、遺伝子を直接狙い撃ちする方法を開発するため、DNAの副溝を配列特異的に認識するピロールイミダゾールポリアミドと、DNAをアルキル化するアルキル化剤について研究を進めていたという。
化合物「KR12」を開発、難治性のがん患者向け治療薬として期待
日本では毎年約3万人の患者が、ドライバー遺伝子変異「KRAS」コドン12の変異を持つがんに罹患し、多くが難治性のがんとなるが、このKRASに対する分子標的治療薬は開発されていなかった。そこで研究グループは、まず、もっとも頻度が高く、難治性で、治療薬がないとされるKRASなどのがんの遺伝子変異を標的にして研究を進めた。
研究グループは、遺伝子の配列認識をがん細胞特異的に作り変えることで、自動的に合成できる仕組みを開発。さらに、通常の化学療法に用いるアルキル化剤をがんの原因となるがん遺伝子(ドライバー遺伝子変異)に直接作用させる薬剤も開発したという。この化合物は「KR12」と呼ばれ、国からの援助のもとに難治性のがん患者向け治療薬として現在も開発中である。
さらに、実際にヒト大腸がん移植マウスを用いた実験では、低濃度の薬剤で副作用なく腫瘍が縮小する高い治療効果が得られているという。同剤の開発技術は、理論上他のあらゆるがんに応用ができるため、今後は治療法のなくなったがん患者一人ひとりに合わせた治療薬を供給する新たな道筋となり得ると期待されている。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果