低悪性度神経膠腫に関する最大規模のゲノム解析を実施
京都大学は4月14日、同大学医学研究科の小川誠司教授、名古屋大学医学研究科の夏目敦至准教授を中心とした共同研究チームが、300例以上の低悪性度神経膠腫の遺伝子解析を実施。公開されている約400例の症例と合わせて700例を超える世界最大規模の網羅的遺伝子解析を行い、低悪性度神経膠腫における遺伝子異常の全貌を明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
低悪性度神経膠腫は、頻度の高い脳原発悪性腫瘍で進行は比較的ゆっくりだが、完治させることが極めて困難な病気だ。多くの患者では治療開始後数年から数十年後で、より悪性度の高い腫瘍として再発する。
低悪性度神経膠腫の発症~進行においてどのような遺伝子異常が生じているのか、これらの遺伝子異常が腫瘍の発生や悪性化に対してどのような役割をもっているかを解明する必要があった。
多様性に富んだ複雑な腫瘍である低悪性度神経膠腫
研究チームは、300例を超える症例を対象に、最先端の遺伝子解析技術を駆使し低悪性度神経膠腫の網羅的遺伝子解析を実施した。その結果、低悪性度神経膠腫は遺伝子異常に基づいて明確に三つのサブグループに分けられることが判明、それぞれのサブグループにおいて起こりやすい遺伝子異常を同定した。また、それぞれの遺伝子異常に対し、腫瘍の発生から進展までどの段階で生じているかも明らかにしたという。以上のことから、低悪性度神経膠腫は異なった遺伝子異常をもつ複数の腫瘍細胞群から構成され、多様性に富んだ複雑な腫瘍であることが明らかになったとしている。
今回の解析は、低悪性度神経膠腫について行われたものの中では、これまでで最大規模の網羅的解析であり、低悪性度神経膠腫の分子病態の解明、治療法の開発等に大きな進展をもたらすものと研究グループは述べている。(
▼外部リンク
・京都大学 研究成果