アプリの事例紹介で最後に登場したのは、薬剤師でありプログラマーでもある堀永弘義氏(Tlapalli, Inc 最高経営責任者)。アプリの「メディカル」カテゴリで、今でもランキング入りしている定番アプリを何本も手がけている先駆者の1人だ。彼も注目する、アプリの海外事例を紹介する。
医療アプリ開発者の草分けが注目する海外事例/堀永氏
Tlapalli, Inc 最高経営責任者 堀永弘義氏
堀永氏が開発を始めた頃は、まだ誰も医療アプリを作っていないうえ、iPhone自体普及していなかったという。そんな中、医療従事者である自分の悩みや周りの人たちのニーズに意識を傾け、アイデアのきっかけにしてきたそうだ。
今回の発表は、自身が開発したアプリではなく、開発者から見ても注目できる事例を主に海外から集めて紹介した。欧米でも、医療従事者の声から生まれたアプリが多いのだという。
例えばiPhone上で薬剤を選択しサインすることで処方箋を薬局へ送ることができるアプリ『Rx-Writer』。医師も患者も手間がかからない。診療時間外でも一括して電話を受け付けてくれるアプリでは、データ上で症状をチェックしてトリアージを行ない、必要な処置、さらにはコールバックもでき、多忙な医師には非常に便利なツールとなっている。また、患者側からのアイデアで開発されたアプリもある。言葉の通じない海外で15言語以上の医療通訳ができ、どうしても困った場合は電話での通訳を頼むことのできる『Canopy Medical Translator』。他にも、視覚障がい者をサポートしたい健常者と、街角で歩いている時などにサポートしてもらいたい視覚障がい者を繋ぐ『Be My Eyes』というのもあった。サポートしてもらいたい障がい者がアプリを立ち上げれば、ボランティアの健常者が地図を見ながら遠隔で道案内をするものだ。さらに、相談しづらい性病などの診断をしてくれるアプリもリリースされている。日本では法律の壁がありすぐにとりいれることができないものも含まれているが、そういう意味でも、海外の事情は参考になるとした。
「ポテトを食べない」宣言でカロリー分を寄付
さらに、アプリ単体で完成するものだけでなく、ハードウェアと連携するものも紹介した。薬のピルケースとアプリが連動しているiPhoneケース『GetWillKit』といったものだ。色分けされたケースに薬を入れておけば、何色の薬を何錠飲めばいいかが分かるそうだ。
また、SNSをチャネルとして積極的に使えば、優れたアプリは宣伝しなくても拡散していくとして、同じアプリをインストールしている誰かが、設定した時刻に電話で起こしてくれるというアプリや、ファストフード店などで「ポテトを食べない」宣言をすると、そのカロリー分の寄付ができるという『Foodtweeks』も紹介した。このような少し変わった視点を持つインパクトのあるアプリは、使う人だけでなく、使わない人も面白がってさらなる拡散が見込めるのだそうだ。最後に堀永氏は、こうした事例を参考に、日本から世界に打って出るアプリを作っていきましょうと呼びかけた。
神戸医療イノベーションフォーラム2015レポート
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