マイクロレベルの気泡で高精度の試薬輸送を実現

芝浦工業大学は12月2日、同大学機械工学科の山西陽子准教授が、針を使わずに気泡の圧力で試薬や遺伝子などを体内に届けることのできる「針なし注射器」の開発に成功したと発表した。

画像はニュースリリースより

市販の針なし注射器は、バネの力で液体を高圧で発射し、皮膚を貫いて筋肉に薬剤を投与するものなどが開発されてきたが、これらは神経を傷つける恐れや、多少の痛みを感じるなどの問題があった。

さらなる構造の最適化を図り、実用化を目指す

山西准教授は2012年、液体中で電圧をかけることで高速発射されるマイクロレベルの気泡の破壊力を利用して細胞を切開、試薬や遺伝子を輸送できる「マイクロバブルインジェクションメス」を開発。細胞への新しい遺伝子導入デバイスを提案している。今回、このデバイスの構造を改良し、空気中でも使用可能、直接皮膚に押し当てるだけで、注射技術の習熟度に関係なく、痛みを伴わずに試薬を目的の場所へ輸送する注射器が開発されたという。

今回の「針なし注射器」は、微細気泡の高速発射で指向性があるために、局部に精度の高い治療が可能。穿孔径は4μmとマイクロレベルで孔を空けることができるために、細胞へのダメージも少なくて済むという。またこの注射器は、植物細胞を含むあらゆる固さの細胞への遺伝子導入・治療など幅広い用途に使用できるとしている。

今後は、デバイス構造の最適化、試薬の導入量、痛み、穿孔深度の評価を行い、企業と連携するなどして実用化を目指していくとのことだ。（横山香織）

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・芝浦工業大学　プレスリリース