老化過程の痕跡を初期化
株式会社コーセーは10月15日、元京都大学iPS細胞研究所特任教授で現コーセー研究顧問の加治和彦氏と共に、同一供与者から異なる年齢で得られた皮膚線維芽細胞からiPS細胞を作製し、それを解析・評価した結果、老化過程の痕跡である短縮した「テロメア」が供与年齢に関わらず回復していることを確認したと発表した。
画像はプレスリリースより
今回の研究では、老化の指標として知られる細胞の染色体の両端にあるテロメアの長さを比較するため、iPS細胞とそれらの元となる線維芽細胞を用いて評価を行った。
その結果、36歳から67歳までの間に線維芽細胞のテロメアの長さは次第に短縮するが、初期化されたiPS細胞のテロメアは、いずれの供与年齢においても、長さが回復していることが明らかとなったという。
ケラチノサイトへの分化にも成功
また、同研究は、36歳から67歳までに得られたすべての線維芽細胞から作製したiPS細胞を、ケラチノサイトに分化させることに成功。異なる細胞に分化するというiPS細胞の特性は、細胞の供与年齢に関わらず、正常に機能することが確認されたという。このことは細胞に刻まれた老化の痕跡が、初期化の過程で取り除かれ、iPS細胞の機能にも影響を及ぼさない可能性を示唆している。
今後は、iPS細胞化と供与者の加齢について、遺伝子レベルでの知見を蓄積し、老化過程の再現やメカニズムの解明が進むことが期待される。さらには、iPS細胞やそれを分化させた細胞を用いることで、老化研究の領域だけでなく、皮膚の生理機能解析や化粧品成分の評価系の確立、動物実験代替法への応用などへも用途を拡大させることが可能になるとしている。
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・株式会社コーセー ニュースリリース