東京農業大学の喜田研究室と共同で
東京大学は10月2日、長期記憶形成時の脳部位に応じた遺伝子発現調節機構を発見したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究結果は、JST戦略的創造研究推進事業として行われた、同大大学院医学系研究科の尾藤晴彦教授らと、東京農業大学の喜田聡教授の研究室との共同研究によるもの。米科学誌「Neuron」オンライン速報版に10月1日付で公開されている。
記憶が一時的なものか、長期的に持続するものかは、特定の遺伝子発現の有無にかかっていることなどが知られている。しかし、脳の各部位でどのようにして特定の遺伝子群だけを読み出し、部位ごとに異なる機能を発揮できるのかは、これまで解明されていなかった。
精神疾患や学習・記憶障害の病態解明や治療法開発に期待
今回の研究では、代表的な転写因子CREBの転写補助分子であるCRTC1に着目。長期記憶に欠かせない海馬と扁桃体において、海馬ではCRTC1の寄与が少ないのに対し、扁桃体では大きく、CRTC1を海馬で強化すると記憶が向上するのに対し、扁桃体では同じように作用しないことを明らかにしたという。
このような部位ごとに異なる転写補助因子の振る舞いは、脳全体に存在するCREBという転写因子が脳部位ごとに異なる遺伝子発現調節を行うことを示唆するものであるという。プレスリリースでは
CREBを初めとする記憶固定化に関わる転写因子は、認知力向上の創薬ターゲットであり、今回の研究成果は、精神疾患や学習・記憶障害などの病態解明および治療法の開発につながるものと期待されます。
と述べられている。
▼外部リンク
・東京大学大学医院 医学系研究科・医学部 プレスリリース