褐色脂肪組織という言葉を聞いたことがありますか?熱を生み出す脂肪組織のことで、人間の場合は両肩の間のあたりに多いと言われます。これまでは、この部分を冷やすと細胞が熱を作り出すため、減量に役立つという説がありました。
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褐色脂肪組織が、人間の健康状態の維持にどのように作用しているかという点は、まだ知られていない部分が多くあります。今回、この褐色脂肪組織の謎に迫るべく、アメリカ・国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所らが行った研究結果が報告されました。
この実験は、4か月間行われ、5人の男性が参加しました。その内容は、昼間は普通通りに過ごしてもらい、夜になったら室温を厳密にコントロールした部屋で過ごしてもらうというものです。室温の効果がしっかり出るよう、1日10時間は部屋で過ごしてもらいました。
最初の1か月は室温24℃。これは、熱を作り出す必要もなければ、放散させる必要もないという温度設定です。2か月目は熱を作り出す必要がある19℃、3か月目は再び24℃に戻し、最後の1か月は体温の放散が必要な27℃に設定しました。
各月の終わりに、褐色脂肪組織の状態を観察すると、2か月目の終わりで褐色脂肪組織が増え、4か月目の終わりでは減っていました。また、褐色脂肪組織が多いときには、インスリン感受性が上がっていることが分かりました。このことは、元々褐色脂肪組織が多い人は熱を産生してエネルギーを消費し、さらに少ないインスリンで血糖が調節できるので、糖尿病や肥満の状態に陥りにくいことが分かります。
この調査から、温度を利用しての褐色脂肪組織へのアプローチが今後生活習慣病の予防などに役立てられるのではないかと期待が集まっています。体の自然の機能を利用した方法、実用化されるといいですね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
・Temperature-acclimated brown adipose tissue modulates insulin sensitivity in humans