早期の段階からノバルティス社が関与
慢性期慢性骨髄性白血病(CML)患者に対し、東京大学医学部附属病院中心に行われた多施設共同の医師主導臨床研究(SIGN研究)において、ノバルティス ファーマ株式会社社員の不適切な関与の疑いがあったとされる問題で、東京大学は学内に設置した特別調査委員会(委員長・松本 洋一郎 東大副学長)の調査結果(最終報告)を発表した。
この研究では、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブを内服している慢性期慢性骨髄性白血病(CML)患者の副作用をアンケート形式で調査し、その後、副作用マネージメントを行っても改善しない症例ではノバルティス社のニロチニブへ切替え、副作用症状の改善度合いを検討していた。
最終報告では、SIGN研究について、
研究計画書やアンケート等の作成に早期の段階からN社が関与するなど様々なかたちでN社社員による役務提供が行われていた。また、日本血液学会学術集会での中間発表において使用されたスライドのうち、少なくとも1枚はN社社員により作成されたものであったが、本来は研究者側で作成されるべきものであった。(東京大学 最終報告より引用)
と、ノバルティス社社員の関与を認定。
利益相反の開示については、「学内や学会の利益相反規定に照らし違反はなかったものの」「透明性の観点からは、倫理審査申請時や学会発表時に事実関係が開示されるべきだった」としている。また、合わせて行われたSIGN研究以外の臨床研究の調査でも、4件で関与が申告され、ノバルティス社社員によるデータの運搬などが行われていたことが明らかになった。
臨床倫理指導員の配置の義務づけなど再発防止策も公表
再発防止策として、血液・腫瘍内科に対し、臨床研究計画時の内部チェック体制を充実させるため複数名の臨床倫理指導員の配置を義務づけなどのほか、入院病棟における病院教職員と事前にアポイントのないMRの入館を禁止するなどを公表した。
門脇孝 東京大学医学部附属病院長は、
この度は、臨床研究「SIGN研究」につきまして、臨床研究の信頼性を損ねることとなり、ご協力いただいた患者様にご心配とご迷惑をおかけし、改めて、心よりお詫び申し上げます。SIGN研究についての第三者委員を含めた特別調査委員会からの報告を真摯に受け止め、今後、臨床研究における倫理や利益相反に関する更なる教育と管理体制の改善等を早急に進めるとともに、より一層透明性を高めた臨床研究の実施に努めて参ります。(東京大学医学部附属病院 お知らせより引用)
とのコメントを発表した。(QLifePro編集部)