合計11,633症例のがんゲノムデータを公開
理化学研究所は5月22日、理化学研究所や国立がん研究センター、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターなど、日本の6つの大学と4つの研究機関が参加し、がんのゲノム変異カタログ作成を進めている国際共同プロジェクトの「国際がんゲノムコンソーシアム」(International Cancer Genome Consortium:ICGC)が5月15日付で、新たながんゲノムデータの公開を行ったと発表した。
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今回のデータ公開は16回目となるもの。1,566症例が新たに公開され、日本からは50症例の肝臓がん全ゲノムデータが公開されている。これで2008年のICGC発足以来、日本からの452症例を含む、合計11,633症例のがんゲノムデータが公開されたことになった。
がんは多数の病態を含むが、ほとんどのがんで、遺伝子の設計図であるゲノム変異が生じる。さらに、特定のがんでは特徴的なゲノム変異が認められることが明らかとなっており、これらを標的とした分子標的薬が開発され、治療に用いられていることなどから、がんに関するゲノム変異の網羅的同定・カタログ化は、がんの新規治療法や診断法、予防法開発に欠かせない重要な基盤といえる。
ゲノム変異データをカタログ化、将来の医療に貢献
近年、急速に進展したDNAシーケンス技術を活用し、容易に行えるようになったエクソーム解析や全ゲノムシーケンスで、どこでどのようなゲノム変異が生じているかを明らかにすることが可能となったことから、ICGCのような取り組みが進んでいる。
公開されている主なデータは、ゲノムの1~2%にあたるタンパク質をコード化しているエクソン内でのデータ。より網羅性の高い全ゲノムデータはICGC内で、まだ1,000症例ほどだという。
ICGCでは、引き続き世界各国で臨床的に重要な50種類のがんを選定し、そのゲノム変異の全貌解明と包括的カタログ化を目指している。2014年5月現在では、世界16か国とEUが参画、部位ごとに74の大規模ながんゲノム研究プロジェクトが進行中だ。
今後、主要がんのゲノム変異カタログが完成すれば、よりがんの疾患としての理解が進み、有効な治療法や診断法、予防法の開発および個別化医療への発展につながると見込まれる。(紫音 裕)
▼外部リンク
理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140522_1/
ICGC Data Portal
https://dcc.icgc.org/