日本腎臓学会会員から患者の検査所見などの情報を収集
大阪大学は12月27日、日本腎臓学会の会員医師を対象に、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の実態に関する2段階のアンケート調査を行い、その結果、ファンコニー症候群を伴った腎機能障害が主要な病態であることが明らかになったと発表した。この研究は、同大キャンパスライフ健康支援・相談センターの新澤真紀講師(兼大学院医学系研究科)、同大学院医学系研究科の松井功講師、土井洋平特任助教(常勤)、猪阪善隆教授(腎臓内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International」に掲載されている。
画像はリリースより
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2023年末から2024年初めにかけて、特定の紅麹関連製品を摂取した人に腎障害が発生したことが、2024年3月22日に報道された。詳細については不明な点が多く、医学的見地から当該製品摂取後に生じた病態や当該製品中止後の経過などを明らかにする必要があった。
研究グループでは、この報道を受け、日本腎臓学会会員を対象に、2024年3月27日~4月30日に、紅麹関連製品摂取後に腎障害を生じたと会員医師が判断した患者の検査所見などの情報を収集した。
診療現場において早急に病態などを把握する必要があったため2024年4月1日に中間報告を行い、初回調査の対象となった192人の患者に関する情報は中間報告第二弾として2024年5月7日に報告している。
今回の研究は、4月の中間報告、5月の中間報告第二弾、その後に行ったフォローアップ調査の結果を踏まえ、紅麹関連製品摂取後に生じた腎機能障害の実態を詳細に検討したものである。
初回調査、192人対象にファンコニー症候群伴った腎機能障害を多く認めた
初回調査では、対象192人のうち95.3%に腎機能障害(腎臓における老廃物の排泄障害:eGFR<60ml/min/1.73m2)を認めた。腎臓は大きく糸球体・尿細管という2つの構造に分けることができ、糸球体障害時と尿細管障害時には、それぞれ認められやすい血液・尿検査値異常が異なる。対象患者の血液・尿検査所見を集計したところ、尿細管障害時に特徴的な低カリウム血症・低リン血症・低尿酸血症・尿糖・代謝性アシドーシスを有する患者(ファンコニー症候群)を多く認めた。
腎臓に生じている病態を直接観察可能な腎生検検査は102人に行われており、血液・尿検査所見に合致して尿細管が障害された所見(尿細管間質性腎炎50.0%、尿細管壊死32.0%)を認めた。また、患者の尿細管細胞において糖の再吸収を担う分子の発現が低下することにより尿糖が出現することを免疫組織化学染色で明らかにした。
摂取中止後にファンコニー症候群関連所見は改善したが、腎機能障害は残存
フォローアップ調査では、初回調査対象患者のうち114人の情報を収集した。その結果、多くの患者でファンコニー症候群に関連する尿細管機能の検査値異常は改善していたが、腎機能障害(eGFR<60ml/min/1.73m2)は87.0%で持続していた。初診時の腎機能(eGFR)で患者を3つのグループに分け、腎機能(eGFR)の経過をモデル化したところ、初診時の腎機能(eGFR)が悪い方ほど回復が不十分だった。また、尿細管間質性腎炎において一般的に用いられるステロイド療法は、この病態では有効であるとはいえないこともわかった。
「研究成果により、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の病態および摂取中止後約2か月時点での転帰が明らかになった。フォローアップ調査においても、腎機能障害(eGFR<60ml/min /1.73m2)が持続している患者が多く存在しており、長期に経過を追う必要性がある」と、研究グループは述べている。
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