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双子への虐待発生率、単胎児よりも約3倍「高」-大阪公立大

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2025年01月16日 AM09:10

児童虐待リスク高い多胎児、出生人口に基づく研究は少ない

大阪公立大学は1月10日、3歳児健康診査のデータと自治体の保健師が支援を行った被虐待児や虐待を受けている疑いのある児童に関する記録をもとに、双子への虐待の発生率とその関連要因を分析した結果を発表した。この研究は、同大大学院看護学研究科の横山美江教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Twin Research and Human Genetics」にオンライン掲載されている。

児童虐待は、子どもの健康や安全を脅かすだけでなく、成長や発達の遅れや、経済的・社会的格差の発生、成人後の健康問題につながる可能性がある。世界的に深刻な問題として認識されており、日本でも児童虐待の相談対応件数が年々増加している。日本の母子保健法では健康診査の最終年齢を3歳と定めており、その年齢までに実施される健康診査において、虐待のリスクや関連要因を特定することが重要である。特に多胎児は、児童虐待のリスクが高いグループに位置付けられているが、多胎児の虐待に関する出生人口に基づいた研究(地域に在住するすべての子どもを母集団としての研究)は、ほとんど行われていなかった。

3歳の単胎児・双子への児童虐待発生率と関連要因を分析

今回の研究では、日本の出生人口に基づいたデータを用いて、3歳の単胎児と双子への児童虐待(以下、不適切な養育)の発生率とその関連要因を分析した。その結果、単胎児1,000人に対し4.31人が、1,000人に対し14.31人が虐待を受けており、他の要因を調整しても双子は被虐待児になる可能性が単胎児よりも約3倍高いことが判明した。

被虐待児での身体的虐待は単胎児42%、双子100%

また、被虐待児のうち身体的虐待を受けていた単胎児は42%だったが、双子では100%が身体的虐待を受けており、その半数は心理的虐待も受けていた。さらに、被虐待児の性別は、単胎児の場合は58%が、双子の場合は86%が男児であった。

双子への児童虐待、母の健康状態が強く関連

虐待者の傾向を分析したところ、双子の場合は86%が母親で、不適切な養育が認められた家庭では、単胎児家庭の母親よりも双子家庭の母親の方が、うつ状態に陥っているケースが多くなっていた。また、双子への不適切な養育が認められた家庭では、そうでない双子の家庭よりも母親の健康状態が悪化している場合が有意に多く、不適切な養育の発生に、母親の健康状態が最も強く関連していることが判明した。

妊娠中から情報提供や支援開始が重要

今回の研究結果から、多胎児家庭は単胎児家庭よりも児童虐待の発生率が高いことと、虐待発生に関連する要因が明らかになった。自治体は母親からの妊娠届を受理した時に多胎妊娠を把握することができるため、妊娠中から保健・医療・福祉の関係者が連携し、多胎を妊娠している母親やその家族に対し、妊娠中から情報提供や支援を開始することが重要である。そうすることで、多胎児家庭における育児負担を軽減し、多胎児への不適切な養育の予防、児童虐待の発生率の低減が可能になる、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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