発症から3か月程度で急速に悪化、迅速な診断が必須な孤発性CJD
長崎大学は12月27日、プリオン病の多くを占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)における新たな診断基準を提唱し、その診断基準の有効性と問題点を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の佐藤克也教授と米・英・独・伊との共同研究によるもの。研究成果は、「Diagnostics」に掲載されている。
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プリオン病は致死性の神経変性疾患で、その多くを占めるsCJDは、異常に折りたたまれたプリオンタンパク質によって引き起こされる致命的な神経変性疾患だ。sCJDは発症から3か月程度で急速に悪化し無動無言に至るために、発症後のできる限り迅速な診断が必須だ。
診断が困難とされているが、髄液(CSF)バイオマーカー検査やタンパク質増幅法(RT-QuIC法)の進歩により高感度な診断が可能になりつつある。また、涙を用いた非侵襲的な診断法も登場し、克服への希望が広がってきている。このような診断法の進歩から、診断基準の改訂がポイントとなりつつある。
新基準「Hermann基準」では従来のWHO基準と比べprobableが大幅増
研究ではまず、sCJDの病態と従来の診断方法を丁寧に解説し、診断におけるバイオマーカーの重要性を指摘し、日本プリオンサーベイランス委員会のデータを用いた後方視的コホート研究により、Hermann基準の臨床的意義を明らかにした。結果、Hermann基準はWHO基準と比べ、sCJDの可能性が高いケース(probableケース)を大幅に増加させ、診断の感度を向上させることがわかった。その一方、特異度はわずかに低下するという課題も浮き彫りになった。
発症からprobable診断までの期間はWHO基準と新基準で有意差なし
発症からprobableケースの診断までの期間は、WHO基準とHermann基準で有意差はみられなかた。Hermann基準のみで診断された群は、WHO基準で診断された群よりも期間は有意に長かった。進行の遅い非典型症例(MM2皮質型等)は、WHO基準での診断が困難な時点でもHermann基準では診断が可能となることがあり、その結果Hermann基準でのみ診断される群では発症から診断までの期間が長い傾向にあると考えられた。
Hermann基準の利点が明らかになったが、課題もあり追加研究が不可欠
研究グループは今回、Hermann基準の利点と限界を詳細に議論し、新たなバイオマーカーの活用に向けた将来の展望を示した。最終的に、sCJD診断のさらなる改善には、追加的な研究が不可欠、と結論づけた。「発症早期に有用で、精度の高いプリオン病(孤発性CJD)の新規診断基準が構築され、その有効性と問題点が明らかになったことで、早期の臨床診断の確定、発症早期の治療法開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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