米国を中心に食道疾患に対して臨床応用済のEHAS
大阪公立大学は12月20日、食道症状への不安や高警戒を評価する米国の質問票「Esophageal Hypervigilance and Anxiety Scale(EHAS)」の日本語版を開発し、国内6施設で食道内圧検査を受けた患者432人による、EHAS日本語版や食道症状に関する質問票への回答結果を検討し、EHAS日本語版の信頼性と妥当性が示されたことを発表した。この研究は、同大大学院医学研究科消化器内科学の沢田明也病院講師、藤原靖弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Gastroenterology」に掲載されている。
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胸やけや逆流感、胸痛、つかえ感といった食道症状には、不安や高警戒といった心理的因子が関与することが知られている。不安や高警戒が強い状態では刺激に対して過敏となり、より強い症状を感じる。また、刺激がなくても症状を感じたり、生理的な刺激を症状として感じることもある。
2018年に米国ノースウェスタン大学のTiffany H.Taft博士やJohn Erik Pandolfino教授らのグループによって開発された質問票「EHAS」は、食道症状に対する不安や高警戒を評価するためのもの。食道症状の強さには、客観的指標よりもEHASのスコアが相関することが報告されており、症状の改善には不安や高警戒への治療介入が必要な症例が存在することを示唆している。EHASはすでに米国を中心に食道疾患に対して臨床応用されているが、日本語版の開発と妥当性の検討は行われていなかった。
日本語版の妥当性、食道内圧検査を受けた日本人患者432人対象に検証
今回の研究では、Tiffany H.Taft博士とJohn Erik Pandolfino教授の協力のもと、EHAS日本語版を開発した。そして、食道症状の精査のために国内の6施設(同大、日本医科大学、群馬大学、東北大学、九州大学、愛知医科大学)で食道内圧検査を受けた日本人患者432人に対する、EHAS日本語版やその他の症状に関する各種質問票への回答結果から、EHAS日本語版の信頼性と妥当性を検証した。
EHASとは、食道症状に対する思いに関する15問からなる質問票で、各質問に対して「全くそう思わない(0点)」から「強くそう思う(4点)」の5段階で評価する。満点は60点となり、質問1~9の合計が不安、10~15の合計が高警戒のサブスコアとなる。
日本語版EHASスコアが高い患者ほど症状を強く感じている、既報と矛盾せず
次に、未治療の食道アカラシアおよび類似疾患を有する患者113人を対象に、食道症状の強さに相関する因子について解析を行った。その結果、EHAS日本語版のスコアは年齢やアカラシアのサブタイプとともに、食道内圧検査のパラメータ(客観的指標)よりも食道症状の強さに有意に相関する因子であることが明らかになった。これは、EHAS日本語版のスコアが高い(不安や高警戒が強い)ほど食道症状が強いことを示しており、既報と矛盾しない結果だった。
「EHAS質問票を日本でも臨床・研究で使用できるようになったことで、英語圏の施設との共同研究が可能となる。米国では、不安や高警戒に対して心理学的な治療介入がよく行われているが、EHASスコアと治療効果の関係については十分な検証が行われていないため、今後はこれらの相関についても研究を進めていく必要がある」と、研究グループは述べている。
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