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軟骨無形成症、CDK8阻害剤投与で疾患マウスの長管骨伸長-岐阜薬科大ほか

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2024年12月26日 AM09:20

連日皮下投与の既存薬、新生児・乳幼児患者への負担が少ない治療薬が求められている

岐阜大学は12月19日、CDK8阻害剤が軟骨無形成症(Achondroplasia)に対する新規治療薬となる可能性を見出したと発表した。この研究は、岐阜薬科大学薬理学研究室・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科・岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)の檜井栄一教授、岐阜薬科大学薬理学研究室の貞盛耕生大学院生(JST次世代研究者挑戦的研究プログラム研究学生)、久保拓也学部生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Biochimica et Biophysica Acta – Molecular Basis of Disease」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

軟骨無形成症は、FGFR3遺伝子の変異による軟骨細胞の機能異常により、四肢の短縮を伴う低身長や特徴的な顔立ちを呈する。およそ2万人に対して1人の発生率といわれている希少性かつ難治性の骨系統疾患である。軟骨無形成症の治療薬としてヒトC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)類縁体のボソリチド(連日皮下投与)が承認されているが、同薬剤とは異なる作用点をもち、新生児・乳幼児を中心とする患者への負担が少ない治療薬候補の探索とその実用化は喫緊の課題である。

間葉系幹細胞などに重要な役割を果たすリン酸化酵素CDK8に着目

研究グループはこれまでに、リン酸化酵素CDK8が、がん幹細胞や、間葉系幹細胞の機能に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。今回の研究では、「軟骨無形成症の軟骨細胞の機能異常にCDK8が関与しているのか?」を検討するとともに、研究グループが独自に開発した経口投与可能なCDK8阻害剤KY-065を用いて、「CDK8の機能を抑えると、軟骨無形成症の病態が改善できるか?」について検証した。

軟骨無形成症マウスの軟骨細胞、CDK8阻害剤で軟骨分化指標「染色性」増強

研究グループはまず、軟骨無形成症モデルマウス由来の軟骨細胞(=ACH軟骨細胞)を用いて、遺伝子およびタンパク質発現解析を行った。その結果、ACH軟骨細胞では、CDK8の発現が遺伝子およびタンパク質レベルで増加していることがわかり、軟骨無形成症の病態進展にCDK8が関与する可能性が示唆された。そこで、「軟骨細胞のCDK8がどのように軟骨無形成症の病態進展に寄与するのか?」を明らかにするため細胞実験を行った。

ACH軟骨細胞は、野生型マウス由来の軟骨細胞と比較して、軟骨細胞分化の指標であるアルシアンブルー染色およびアルカリホスファターゼ染色の染色性が低下する。一方、ACH軟骨細胞にCDK8阻害剤KY-065を作用させると、両染色の染色性が著明に増強することが判明した。

CDK8によるSTAT1のSer727のリン酸化が病態に関与する可能性示唆

さらに、KY-065を添加したACH軟骨細胞では、STAT1のSer727のリン酸化が著しく抑制されることが確認された。一方、STAT1のTyr701のリン酸化やErk1/2のリン酸化には著明な変化は認められなかった。すなわちKY-065は、CDK8の働きを抑え、STAT1シグナル経路を部分的に遮断することで、軟骨細胞の機能を回復させていることが示唆された。

軟骨無形成症モデルマウス、KY-065投与で長管骨伸長を確認

最後に、細胞実験で得られた結果が、動物実験でも再現できるかを検証した。軟骨無形成症モデルマウスは、著明な長管骨の短縮を示すが、同マウスにKY-065を投与すると、長管骨の伸長が確認できた。さらにその長管骨を詳細に解析したところ、成長板軟骨層の形態が回復し、肥大化軟骨細胞層の肥大化も観察された。

以上の成果より、CDK8阻害剤KY-065は、STATシグナルを減弱させ、軟骨無形成症の軟骨の機能異常を回復させ、長管骨を伸長させることが明らかになった。すなわち、軟骨細胞のCDK8は軟骨無形成症の治療標的であり、CDK8阻害剤が同疾患の治療薬候補となる可能性が示された。

経口投与可能なCDK8阻害剤、新生児・乳幼児患者の負担軽減できる可能性

CDK8阻害剤KY-065は経口投与可能であり、軟骨無形成症の患者(特に新生児・乳幼児)への負担を軽減することが可能である。また、既存薬ボソリチドとは異なる作用点を持っており、KY-065とボソリチドとの併用により相加相乗効果が期待できる。

今回の研究は、CDK8阻害剤が軟骨無形成症に対する新規治療薬の候補となる可能性を示した世界初の報告となる。「今回の研究成果は、軟骨無形成症に限らず、軟骨細胞の機能異常や恒常性維持の破綻によって引き起こされる難治性骨系統疾患(タナトフォリック骨異形成症など)に対する革新的治療法を提供し、アンメット・メディカル・ニーズの解消にも貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。

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