免疫疲労を起こす前に免疫チェックポイント阻害薬で治療が可能に
西川忠曉氏(東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 講師)は2024年12月13日、アストラゼネカが都内とオンラインで開いたセミナーで「一次治療で免疫疲労を起こす前に免疫チェックポイント阻害薬で治療ができるようになったことは、革新的な進歩だ」と述べた。
西川忠曉氏(アストラゼネカ提供)
セミナーは、免疫チェックポイント阻害薬で抗PD-L1抗体の「イミフィンジ(R)」(一般名:デュルバルマブ)と分子標的薬でPARP阻害薬の「リムパーザ(R)」(一般名:オラパリブ)が2024年11月に進行または再発子宮体がんの治療薬として適応追加され、一次治療での併用療法が承認されたことを踏まえたもの。
西川氏は、DNA複製で生じるミスマッチ塩基対合を修復する細胞のミスマッチ修復(MMR)機能について、「MMR機能が欠損しているdMMR細胞では免疫チェックポイント阻害薬への反応性が高い一方で、MMR機能が正常なpMMR細胞では効果が限定的だ」と説明。「pMMR細胞を持つ症例での免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療はこれまで課題だった」とした上で、「リムパーザや化学療法をイミフィンジと併用することで免疫原性が高まり、がんに対する免疫反応の増強が期待される」と併用療法承認の意義を述べた。
西川氏は、進行・再発子宮体がんの一次治療で、初めての免疫チェックポイント阻害薬と、化学療法やPARP阻害薬の併用による複合免疫療法の実施可能となったことについて、「子宮体がんの薬物療法におけるパラダイムシフトが起きた」と強調。「殺細胞性抗がん薬などで免疫疲労を起こす前に免疫チェックポイント阻害薬で治療ができるようになり、一部の患者で予後の改善を望める可能性が出てきた。革新的な進歩だ」と指摘し、「一次治療の変化を踏まえて、二次治療の戦略も再検討が必要だ」と述べた。
POLE変異の遺伝子検査、保険適用を目指す
セミナーでは岡本愛光氏(東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 主任教授)も講演した。岡本氏は、子宮体がんの分類について、2023年にFIGO(国際産婦人科連合)が子宮体がんの進行期分類を全面改訂したことを踏まえ、「近年、分子遺伝学的な分類が導入されつつある。ミスマッチ修復(MMR)関連たんぱくおよびp53の免疫組織化学染色(IHC)による変異パターンを用いた分類法であるProMisEは、日常診療でも実施しやすい」と説明しつつ、ProMisEに基づいた診断・治療を行うために必要なPOLE変異の有無を調べるDNAシークエンスが保険適用されていないことに課題感を表明。「保険適用に向けては、日本婦人科腫瘍学会や日本産科婦人科学会など関係学会が厚生労働省と話を進めている」と述べた。
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