難治性進行膀胱がん、新たな治療法に期待
第一選択療法が奏効しない難治性の進行膀胱がん患者に希望をもたらす、新たな治療法に関する研究結果が報告された。Cretostimogene grenadenorepvec(以下、cretostimogene)と呼ばれる新薬による治療で、標準治療のBCG療法に反応を示さなかった筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者の4分の3が完全寛解を達成したことが確認された。米メイヨー・クリニック総合がんセンターのMark Tyson氏らによるこの研究結果は、泌尿器腫瘍学会年次総会(SUO 2024、12月4〜6日、米ダラス)で発表された。Tyson氏は、「これらの研究結果は、膀胱がん患者の大きなアンメットニーズに応えるものであり、患者の生活の質(QOL)を向上させる可能性がある」と話している。
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米国がん協会(ACS)によると、米国では毎年8万3,000人以上が新たに膀胱がんと診断され、このがんに関連して1万7,000人近くが死亡している。膀胱がんは高齢者に多く、女性よりも男性の方がリスクが高い。
膀胱がんでは、BCGワクチンを膀胱内に注入する治療法(膀胱内BCG注入療法)が標準治療とされている。BCGワクチンは、1921年に結核予防を目的に開発されたが、膀胱に注入することで免疫反応を引き起こし、がん細胞を攻撃してその増殖や再発を抑制する効果を期待できることから、膀胱がんの治療にも用いられている。しかし、全ての患者がBCG療法に反応するわけではないと研究グループは説明する。
今回の研究でTyson氏らは、BCG療法が奏効しなかった110人のNMIBC患者を対象に、cretostimogeneによる治療の安全性と有効性を検討した。Cretostimogeneは、腫瘍溶解性ウイルス療法の一種で、がん細胞に感染させたウイルスの力でがん細胞を攻撃させ、同時に免疫システムを活性化させることでがんの治癒を目指す。対象患者には、3年間にわたり膀胱内にcretostimogeneを断続的に投与する治療が行われた。
その結果、対象者の75%近くががんの完全寛解に至り、その多くが2年以上がんのない状態で生存していることが確認されたことを、Tyson氏らはメイヨー・クリニックのニュースリリースで報告している。また、驚くべきことに、ほとんどの対象者は膀胱摘出術を必要としなかった。さらに、cretostimogeneによる治療の忍容性は高く、重篤な副作用は最小限であったという。
Tyson氏は、「本研究により、cretostimogeneによる治療は効果的で安全性も高いことが判明した。膀胱摘出術の必要性を減らすこの治療法は、治療選択肢が限られている患者にとって待望の代替手段となる可能性がある」と述べている。研究グループは、今後の調査で長期的な有効性や、この治療法を他の治療法と組み合わせることでその有効性が高まるかどうかを調べる予定であるとしている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
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