運動後低血圧は従来の薬物療法では改善せず、代替療法として水分摂取に注目
杏林大学は12月11日、運動後の起立性低血圧を軽減する方法として水分摂取の効果を検証した結果を発表した。この研究は、同大保健学部理学療法学科の研究当時、学部学生であった田島優希氏、込山真由氏、三村尚也氏、山本麻衣花氏の研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Autonomic Research」に掲載されている。
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運動後の低血圧は、末梢血管拡張や心拍出量の減少によるものとされている。これらの変化は、高血圧患者にとって有益であるが、一部の状況では起立性低血圧や失神を引き起こすリスクがある。しかし、従来の薬物療法では十分な改善が得られない場合が多く、代替療法としての水分摂取が注目されている。
健康な成人対象、水分摂取の有無による起立性低血圧発生率と心血管動態を比較
今回の研究では、健康な成人14人(男女各7人、平均年齢20歳)を対象に、水分摂取の有無で起立性低血圧の発生率と心血管動態を比較した。具体的には、30分間のサイクリング後、500mlの冷水を摂取する群と摂取しない群を比較した。測定項目は、心拍数、血圧、心拍変動(RR間隔の変動)および動脈圧受容器感受性とした。
水分摂取で心拍数低下と血圧上昇、心臓自律神経活動の回復を促進
研究の結果、運動後に起立性低血圧(OH)の発生が増加するが、水分摂取によって急性の予防効果が確認された。また、水分摂取によって心拍数(HR)の低下と収縮期血圧(SBP)の上昇が観察され、心臓自律神経活動の正常化が示唆された。水分摂取後に動脈圧受容器感受性が回復し、起立性低血圧の発生率が低下した。
運動後の失神や心血管イベント予防に向けた実践的なアプローチにつながる可能性
今回の研究は、水分摂取が運動後の起立性低血圧を軽減し、心血管イベントのリスクを低下させる可能性を初めて示した。この結果は、運動後の失神や心血管イベントの予防に向けた実践的なアプローチを提供する、と研究グループは述べている。
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