成人の難治性の白血病治療に新たな希望
免疫療法のAucatzyl(一般名obecabtagene autoleucel)が、難治性白血病の一種であるB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の成人患者に対して高い奏効率を示した第1b/2相臨床試験の結果が、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に11月27日掲載された。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのElias Jabbour氏らが実施したこの試験では、Aucatzylによる治療を受けたB-ALL患者のほとんどが、その後、幹細胞移植を必要としなかったことが示された。
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Jabbour氏は、「B-ALL患者には効果的な単独治療の選択肢が必要とされているが、Aucatzylは長期にわたる強力な効果と奏効率を示した」と述べている。米食品医薬品局(FDA)はこの試験の結果に基づき、2024年11月8日に、成人のB-ALL患者に対する治療としてAucatzylを承認している。
白血病研究財団(LRF)によると、B-ALLは、骨髄で作られるB細胞と呼ばれる白血球が正常に成熟できず、リンパ芽球と呼ばれる未熟なB細胞が異常に増殖する疾患である。このような異常なリンパ芽球は骨髄に蓄積し、やがて血液中に流出して体内のさまざまな場所に広がっていく。成人のALL患者の約75%がB-ALLで、5年生存率は約40%とされている。
Aucatzylは、遺伝子改変によって、がん細胞を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を患者のT細胞に導入し、その改変T細胞を患者の体内に戻すことでがん細胞を攻撃できるようにするCAR-T細胞療法の一種である。Aucatzylでは、患者のT細胞に、がん化したB細胞の表面に発現するタンパク質のCD19を認識させるようにする。
今回の臨床試験では、再発した、または他の治療では効果が得られないB-ALLの成人患者127人を対象に治療が行われた。全ての患者がもともと体内にあるT細胞を除去するための化学療法を受け、その後、Aucatzylによる治療を1回以上受けていた。
その結果、Aucatzylが奏効した99人の患者のうち、寛解中に幹細胞移植が必要となったのはわずか18人(18%)だった。これは、CAR-T細胞療法の効果が高く、幹細胞移植を必要とする患者が少なかったことを意味する。CAR-T細胞療法の点滴投与から幹細胞移植までの期間中央値は101日だった。登録時に形態学的疾患が認められた94人を対象にした解析では(追跡期間中央値20.3カ月)、77%で治療効果が得られ、半数以上(55%)が完全寛解に至ったことが確認された。
さらに、127人中91人は治療前に5%以上の骨髄芽球が認められたハイリスク患者だったが、そのうちの68人が完全寛解を達成した。68人のうち62人は微小残存病変(MRD)のデータが利用可能であり、うち58人(94%)ではMRDが認められなかった。中央値21.5カ月の追跡期間中における127人の無イベント生存期間中央値は11.9カ月、6カ月後および12カ月後の無イベント生存率は、それぞれ65.4%と49.5%、全生存期間の中央値は15.6カ月であり、6カ月後および12カ月の全生存率は、それぞれ80.3%および61.1%と推定された。
Jabbour氏は、「これまで、B-ALL患者には限られた治療選択肢しかなかった。われわれは、CAR-T細胞療法の免疫毒性は最小限であり、また強力な持続性を持つことを確認した。このことは、Aucatzylがこの患者集団の標準治療となることを支持している」とMDアンダーソンのニュースリリースの中で述べている。なお、この臨床試験はAucatzylの開発企業であるAutolus Therapeutics社の助成を受けて実施された。
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・Obecabtagene Autoleucel in Adults with B-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia
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