質感のオノマトペ表現に着目、患者に心理的な負担をかけない早期認知症診断ツール
順天堂大学は12月5日、オノマトペを用いた質感認知検査(Sound Symbolic Words Texture Recognition、SSWTR)によって、患者に心理的な負担をかけることなく、早期に認知機能の低下を発見できるスクリーニングツールを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科脳神経外科学の中島円准教授らの共同研究グループと電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻の坂本真樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Aging Neuroscience」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
認知症の治療介入には、早期診断が重要であることが知られている。一般の認知症の検査には医師や神経心理士が時間を要し、また、被験者も認知症と診断される社会的スティグマは過度な恐れを生み出し、医療機関の受診や支援につながることを遅れさせることがある。そこで研究グループは、質感のオノマトペ表現(擬音語・擬態語の総称、Sound Symbolic Words Texture Recognition、SSWTR)に着目し、患者に心理的な負担をかけることのない早期認知症診断ツールを開発した。
iNPH患者102人対象、質感オノマトペ+神経心理検査で軽度認知機能障害を評価
今回の研究では、成人慢性水頭症である特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)と診断された102人に対し、質感オノマトペ(SSWTR)検査と一般的な神経心理検査を実施し、軽度認知機能障害を評価した。SSWTR検査では、健常者による予備実験実施のうえで、光沢知覚・素材知覚を基盤とした合計12枚の写真を見せ、8つのオノマトペの選択肢(すべすべ、つるつる、ざらざら、ふわふわ、さらさら、ぬるぬる、ごつごつ)から患者に選択してもらい、0から1点の計12点でスコア化した。患者にはこの新しい検査のほか、同時にミニメンタルスケール(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、欧州iNPH認知機能重症度スケール(レイ15語聴覚性言語学習検査[RAVLT]、ペグボードテスト、ストループ検査)を実施し、MMSE 28点以上の認知機能正常群(n=39)と22から27点の軽度認知症群(n=51)を比較した。
SSWTR検査は10分で実施可能、被験者が認知症スティグマを感じずにスクリーニング可能
研究の結果、SSWTRのアンケートは10分以内に実施可能で、他の神経心理検査と中程度の相関が認められた。SSWTRは、認知機能正常群と軽度認知障害群を、ROC解析でAUC=0.70、cut-off=7.34(p=0.001)、感度62%、特異度74%で鑑別した。オノマトペを推察する質感認知検査―SSWTRは、短時間で実施でき、被験者が認知症スティグマを感じることなく、軽度認知機能障害をスクリーニングできるツールであることが示された。
一般向けにゲーム感覚で、認知症早期発見にも期待
今回開発されたスクリーニングツールは、検査時間を短縮し、認知症と判断されることへのスティグマを生じさせないことで被験者の負担を減らすことが期待される。また、汎用性の高い同ツールは、一般の方にもゲーム感覚で広く使用してもらうことで、認知症早期の発見を促すことが予想される。すでにウェブ上で回答できるツールとして実装しているため、どこでも広く本検査を実施することが可能だ、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・順天堂大学 プレスリリース