個人の接種歴や認識・知識と接種/忌避理由との関連は不明
岡山大学は11月27日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種歴と接種予定、積極的ワクチン接種勧奨の再開への認識などについてアンケート調査を行い、一般集団に比した医療系学生の性別、学年、専攻分野ごとの差異について明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)の神辺まどか大学院生、岡山大学病院総合内科・総合診療科の大塚勇輝助教、同大学病院感染症内科の萩谷英大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されている。
HPVワクチンは子宮頸がんの発症を予防できる方法として医学的に証明され先進各国において高いワクチン接種率を有する。日本でも2013年に小学校6年生~高校1年生相当の女性を対象とした定期接種が開始されたが、副反応への懸念からすぐに政府当局によって積極的勧奨が中止された。ワクチン接種と有害事象の因果関係が医学的に証明されなかったことも踏まえ、2022年4月に積極的勧奨の再開、2023年4月に定期接種の再開がなされている。しかし、依然として日本におけるワクチン接種率は低く、これが子宮頸がん発症率の上昇につながっていると考えられる。当局は勧奨中止期間の若年女性に対するキャッチアップ接種を促進しているが、各個人が有する接種歴や認識・知識とHPVワクチンを接種ないし忌避する理由との関連などは不明だった。
医療系学生対象、HPVワクチン接種歴・予定/接種勧奨施策の認識等をアンケート調査
今回研究グループは、岡山市内の2,567人の医療系学生(医学部、歯学部、薬学部)を対象に、HPVワクチン接種歴と接種予定、積極的ワクチン接種勧奨の再開への認識などについて、ウェブアンケート調査を行った。2023年7月7日~31日までの期間に、男性181人、女性739人を含む933人(36.3%)から回答が得られた。
女子は医学部医学科で接種率高、認識は女子全学年/男子高学年で高い傾向
女子学生全体でのワクチン接種率は55.6%で、専攻別にみると医学部医学科(73.8%)の学生でより高い接種率が見られた。政府当局のワクチン接種推奨の中止と再開に対する認識は、女子学生ではどの学年でも高かった一方で、男子学生では高学年の方が高いという結果であった。女子学生の半数以上(54.7%)は、両親のアドバイスに基づいてワクチン接種を受けたと回答した。ワクチン未接種だが将来の予防接種に関心がある学生の理由としては、副作用への懸念(47.4%)とワクチン接種スケジュール調整の難しさ(29.1%)が挙げられた。
ワクチン忌避、親の意向に基づいた接種控えなどが明らかに
今回の研究結果は、一般集団に比した医療系学生のワクチンリテラシーの高さや医学教育の効果を反映したものと思われたが、特に男子学生においては接種率も認知率・知識も低迷・不良であり、諸外国に比して日本のHPVワクチン政策の遅れが浮き彫りとなったと研究グループは考えている。ワクチン忌避の理由として、本人の意向だけでなく親の意向に基づいた接種控えが存在していることや、医療系学生特有の他のワクチン接種のタイミングあるいは勉学・転居などのイベントと重複することに起因した接種スケジュール調整の難しさが抽出された。この結果が今後のアウトリーチ活動や医学教育を考える契機となりうると考えられる、と研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース