心肺フィットネスの向上は認知症リスクの軽減につながる
認知症リスクが高い遺伝子を持つ人は、定期的な運動により心肺フィットネス(cardiorespiratory fitness;CRF、心肺持久力とも呼ばれる)を向上させることで、認知症リスクを軽減できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)老化研究センターのWeili Xu氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に11月19日掲載された。
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CRFとは、運動中の筋肉に酸素を供給する体の循環器系と呼吸器系の能力のことを指す。この能力は、20代から筋肉量の減少に伴い低下し始め、その後、加速度的に低下する。70代になると、CRFは10年当たり20%以上低下する。低CRFは、あらゆる原因による死亡や、脳卒中や心筋梗塞などの心臓関連イベントの強力な予測因子である。
この研究でXu氏らは、UKバイオバンク参加者から抽出した、認知症のない39〜70歳の成人6万1,214人を対象に、最長12年間追跡して、CRFと認知機能および認知症リスクの関連を、認知症の遺伝的なリスクを考慮して検討した。参加者のCRFは、エアロバイクを用いた6分間の最大下負荷での運動テストにより測定し、低・中・高に分類した。また、認知症の遺伝的リスクは、アルツハイマー病の多遺伝子リスクスコア(PRSAD)を用いて評価し、低・中・高に分類した。
追跡期間中に553人の参加者(0.9%)が認知症の診断を受けていた。解析の結果、CRFが高い人ではCRFが低い人に比べて、認知症の発症リスクが40%低く(発症率比0.60、95%信頼区間0.48〜0.76)、認知症の発症が1.48年(95%信頼区間0.58〜2.39)遅れることが示された。また、PRSADが中程度から高い人の間では、CRFが高い人はCRFが低い人に比べて、あらゆる認知症のリスクが35%低いことが明らかになった。
Xu氏らは、「われわれの研究は、CRFが高いほど認知機能が向上し、認知症リスクが低いことを示している」と結論付けている。ただし、研究グループは、「この研究は因果関係を証明するものではなく、両者の間に関連があることを示したに過ぎない」と強調している。また、UKバイオバンク参加者は、人口全体に比べると健康状態が良好であるため、認知症の症例数が過小評価されている可能性があることや、特定の健康状態にある人は運動テストを受けていないことなどの限界点もあるとしている。それでも研究グループは、「CRFを強化することは、アルツハイマー病の遺伝的リスクが高い人にとって、認知症予防の戦略となる可能性がある」と述べている。
研究グループは、「CRFと脳の健康の関係、さらに、それが遺伝的リスクと認知症の関連にどのような影響を与えるかについては、さらなる研究が必要だ」と述べている。
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