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ストレスがかかった時に呼吸変化を引き起こす神経回路を解明-筑波大

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2024年11月28日 AM09:30

精神性ストレスがかかった時の呼吸変化の神経基盤は?

筑波大学は11月21日、精神性ストレス応答の中核として知られる脳の外側手綱核がドーパミンを放出する神経細胞(ニューロン)を介して精神性ストレス時の呼吸運動の変化も担っていることを新たに見出したと発表した。この研究は、同大医学医療系の小金澤禎史准教授、同大ニューロサイエンス学位プログラム(後期博士課程)3年次の水上璃子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pflügers Archiv-European Journal of Physiology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

生物がストレスに対して速やかに、かつ適切に行動できるかどうかは、生存に直結する。ストレス時に急性に生じる循環系や呼吸の応答は、闘争や逃走などの速やかで適切な行動を支えるシステムの一部だと考えられており、意識に関係なく脳によって制御されている。

呼吸運動は呼吸中枢により、運動などの刺激に応じて細かく調整されている。また、呼吸は感情によっても変化しており、特に不安や恐怖などのストレスは急性の呼吸頻度増加を引き起こす。このような応答が異常をきたすと、過換気症候群などのように呼吸頻度の過剰な増加や呼吸困難感が生じる。さらには、症状を引き起こした刺激や環境そのものが恐怖の対象となり、社会生活を困難にしかねない。精神性ストレスがかかった際に生じる健常な呼吸応答の神経基盤の詳細を知ることは、その異常によって生じる病態の理解を深めるためにも重要だ。

そこで、精神性ストレスに対する呼吸応答の中核として外側手綱核(視床上部に存在する領域)に注目し、その活性化に伴う呼吸応答と、応答を制御する神経回路の詳細を明らかにすることを目的とした研究を行った。

<外側手綱核活性化<腹側被蓋野ドーパミンニューロン<呼吸応答制御

研究では、麻酔下のラットの外側手綱核を電気刺激で興奮させ、その際の呼吸運動を記録した。その結果、外側手綱核活性化により、ストレス時と同様に呼吸頻度と分時換気量が増加することがわかった。また、電気刺激の条件が一定の強度以上であるときに、呼吸頻度と分時換気量は増加することもわかった。

また、神経伝達物質の中でもストレス応答と呼吸制御に関与することが知られるドーパミン神経系とセロトニン神経系の関与を検討した。ドーパミン受容体の阻害薬を投与すると外側手綱核誘発性の呼吸応答は強力に抑制され、セロトニン受容体の拮抗薬を投与すると部分的に増強された。

さらに、外側手綱核による呼吸運動制御を主に仲介する神経回路を探索するため、この回路を仲介し、ドーパミンを放出するニューロン(ドーパミンニューロン)の脳内での存在部位の特定を試みた。中脳ドーパミンニューロンの主要な存在部位である腹側被蓋野をGABAA受容体作動薬を用いて局所的に不活性化したところ、外側手綱核の興奮による呼吸応答が完全に抑制された。このことから、ストレス刺激による外側手綱核の活性化は腹側被蓋野のドーパミンニューロンを介して呼吸応答を制御していることが示唆された。

神経回路をより詳細に明らかにし、神経系疾患の予防・治療開発への応用に期待

研究は外側手綱核の活性化が腹側被蓋野のドーパミンニューロンを介して呼吸応答を引き起こすことを示した。「今後は、ストレス性の呼吸応答を引き起こす神経回路をより詳明に知るため、腹側被蓋野ドーパミンニューロンの活動がどのようにストレス性呼吸応答を仲介するのか、その活動の変化や呼吸中枢への投射経路を調べていきたい。これらの研究でストレス性の呼吸応答を引き起こす神経基盤を解明することで、健常な状態におけるストレス応答の機序が詳らかとなり、疾患における神経系の異常を予防・治療する方法の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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