運動麻痺のロボットリハビリ、DXにより最適化するには?
大阪公立大学は11月22日、医療者が一般的に使用している脳卒中後に生じる手の運動麻痺の程度を調べる検査を行うだけで、ロボットが最適なリハビリプログラムを自動で推薦してくれるシステムを世界で初めて開発したと発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の竹林崇教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」のオンライン速報版に掲載されている。
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脳卒中は発症後、重い後遺症が残り、家族によって何かしらの介護が必要となる病気といわれている。特に、多くの対象者の片側の手足に運動麻痺が生じるため、それらに対するリハビリがとても重要だ。
現在、運動麻痺に対してロボットを使ったリハビリ(ロボットリハビリ)の効果が世界中で認められ、多くのガイドラインでも推奨されている。しかし、適切なロボットリハビリを提供するためには、ロボットを扱うための知識や技術が必要だ。また、どの医療者でも最初から簡単に最適なリハビリプログラムを提供できるわけではなく、リハビリ業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められている。
「ReoGo-J」のリハビリプログラムを、手の麻痺検査データから自動推薦するシステムを開発
研究では、リハビリのプロフェッショナル達が、上肢用ロボット型運動訓練装置である「ReoGo-J」(帝人ファーマ株式会社が開発)を用いて、312人の対象者の手の運動麻痺の程度に合わせて選別したリハビリプログラムのデータを収集し、項目反応理論という統計手法により分析した。
その結果、昔から医療者が一般的に使用している脳卒中後に生じる手の運動麻痺の程度を調べる検査を行うだけで、ロボットが最適なリハビリプログラムを自動で推薦してくれるシステムを世界で初めて開発した。このDXシステムを使うことで、従来の検査さえ実施できれば、ロボットを使った経験が全くない医療者でも適切な手の運動麻痺に対するロボットリハビリを提供することができる。
「ReoGo-J」は2023年で取扱終了、再販望まれる
画期的なDXシステムの普及により、効果的なロボットリハビリを、誰でも、どの施設でも適切に提供できるようになることで、脳卒中後の手の運動麻痺の機能予後の改善や、周囲からの介護量の軽減につながる可能性がある。その一方で、「ReoGo-J」は効果が証明されているにも関わらず、経済的な理由から2023年4月に取り扱いを終了している。「リハビリ現場では、医療者や対象者からロボットの販売の再開を求める声が多く上がっている。研究成果がより多くの企業に届き、開発や取り扱いが再開されることを願っている」と、研究グループは述べている。
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