抗体検査によるHEV感染診断の精度は不明だった
広島大学は11月18日、複数の学術データベースを対象としたメタ解析により、E型肝炎ウイルス(以下、HEV)の感染診断においてHEV抗体検査が有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学の吉永弥生氏(博士課程後期MD-PhDコース)、Mirzaev Ulugbek Khudayberdievich氏(博士課程後期)、KoKo助教、田中純子特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hepatology Research」に掲載されている。
HEVは、経口感染により急性肝炎を引き起こすウイルスである。衛生環境が十分とは言えない発展途上国を中心に世界的に流行しており、年間の感染者数は約2000万人と推測されている。通常は一過性で回復するが、まれに重症化することがある。特に妊婦や免疫不全状態の患者では重症化リスクが高く、感染の早期発見と治療が望まれる。
感染診断においては、ウイルス自体を検出するPCR検査がゴールドスタンダードであるが、費用や技術の制約で利用できない国や地域がある。このため、より簡便で広く利用可能な診断法が求められている。HEVを対象とした抗体検査は比較的簡便で広く利用可能であるが、感染を診断するうえでの精度については、これまで十分に明らかになっていなかった。
21の研究をメタ解析、HEV IgM抗体の感度83%・特異度98%
研究グループは、HEVの診断における抗体検査の信頼性の精度の評価を目的として、メタ解析を実施した。複数の学術データベースから抽出された21の研究を解析。そのうち、20件の研究は急性肝炎の患者を対象とした研究だった。
メタ解析の結果、HEV IgM抗体(感染初期に産生される抗体)の感度は83%、特異度は98%であり、HEV IgG抗体(感染後しばらくしてから産生される抗体)の感度は74%、特異度は89%となり、共に高精度だった。その精度の高さからHEV IgMおよびHEV IgG抗体検査はPCRの代わりとして感染診断法としての利用が期待される。
専門的な設備が乏しい地域でも早期診断と適切な治療につながる可能性
研究成果により、急性肝炎患者の感染診断において、HEV IgMおよびIgG抗体検査が共にPCRに代わる有効なHEV感染診断法である可能性が示された。「これにより、専門的な設備が乏しい地域でも早期診断と適切な治療が可能となり、予後の大幅な改善が期待される」と、研究グループは述べている。また、同グループは現在、DBSサンプルを使用して、アフリカ地域におけるHEV抗体の保有率の解明にも取り組んでいる。
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・広島大学 プレスリリース