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若年層のHTLV-1性感染症例、短い潜伏期間で眼疾患発症-科学大ほか

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2024年11月22日 AM09:10

都市部でHTLV-1感染者増加、水平感染が一因と推定

東京科学大学は11月15日、若年者を対象にした検討を進めた結果、HTLV-1()の水平感染(性感染)による疾患発症()が、短い潜伏期間・低いプロウイルスロード(感染細胞率)で生じ、再発を繰り返し遷延する可能性があることを発見したと発表した。この研究は同大大学院医歯学総合研究科眼科学分野の鴨居功樹講師、大野京子教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科病態医療科学分野の内丸薫教授、(以下、東大医科研)附属病院血液腫瘍内科(同研究所附属先端医療研究センター造血病態制御学分野)の南谷泰仁教授、東條有伸元病院長(現:東京科学大学副理事・副学長)、聖マリアンナ医科大学血液・腫瘍内科の渡邉俊樹特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Virology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

HTLV-1は、世界で3,000万人以上の感染者がいると推定されるレトロウイルスであり、先進国の中では日本に最も多くの感染者が存在する(70万人〜100万人)。このウイルスは、一度感染すると生涯にわたり感染が持続することを特徴とし、成人T細胞白血病やHTLV-1関連脊髄症、HTLV-1ぶどう膜炎など、さまざまな疾患を引き起こす。

長い間、成人T細胞白血病やHTLV-1ぶどう膜炎などのHTLV-1による疾患は垂直感染後に50年以上の長い潜伏期間を経て、プロウイルスロードが高くなることで発症すると認識されていた。そのため、日本政府は妊婦健診にHTLV-1抗体検査を組み入れ、感染が診断された母親には人工乳を推奨するなど、垂直感染対策を強化してきた。一方、近年の調査によって、東京など都市部におけるHTLV-1感染者の増加が指摘され、その一因が水平感染によるものと推定されていた。しかし、HTLV-1の水平感染と疾患発症の関連性は未解明な部分が多く、特に性感染経路による疾患発症については明らかにはなっていなかった。

性感染から1年以内に発症、HTLV-1ぶどう膜炎の再発を繰り返す

同大と東大医科研は、HTLV-1関連の眼疾患の診療に多くの実績がある。今回、若年者を対象とした検討の結果、母親や妹がHTLV-1に感染しておらず、水平感染経路であることが確定した最年少(10代)のHTLV-1ぶどう膜炎を発見した。また輸血歴・タトゥー歴・薬物歴・パートナー歴などを詳しく調査した結果、性感染から1年以内に発症したことが強く示唆された。その後、長期にわたるフォローアップの中で、HTLV-1ぶどう膜炎の再発を繰り返し遷延するとともに、経過中にHTLV-1角膜炎が発症し、その再発・遷延も認められた。

今回の報告は、従来の垂直感染経路による認識とは異なり、水平感染経路では短い潜伏期間・低いプロウイルスロードであっても疾患が発症し、再発・遷延する可能性を示している。中高年だけでなく、若年者における疾患発症にも注意が必要であることも示した。

水平感染による発症メカニズム解明、若年層への性感染症としての周知強化へ

今回の研究では、HTLV-1の水平感染が短期間で疾患を発症させるリスクを示した。これは、HTLV-1感染症が垂直感染だけでなく、水平感染の観点からも重要な公衆衛生上の課題であることを示している。特に、性的活動が活発な若年層への啓発や、社会全体への周知によって、感染リスクを低減させる行動変容を促すことが期待される。これらの取り組みにより、HTLV-1関連疾患の新規発症を減少させ、医療費の削減にも寄与すると考えられる。

「今後、HTLV-1の水平感染による疾患発症メカニズムの解明や治療法の開発を進めるとともに、公衆衛生上の戦略の見直しを提言していきたい。特に若年層への性感染症として周知を強化し、HTLV-1感染拡大の防止に貢献することが期待される。さらに、医療従事者への情報提供を強化し、HTLV-1に関する認識を高めることで、早期診断・早期治療体制の構築を目指す」と、研究グループは述べている。

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