環境刺激に対して敏感に反応しやすい人「HSP」
大阪大学は11月6日、環境刺激に対して敏感に反応しやすい人(Highly Sensitive Person:HSP)について、企業で働く人を対象に調査を行い、HSPが職場で比較的ストレスを感じやすい傾向があること、一方で「同僚に共感しやすい」という企業にとって、ポジティブに作用する側面を有することを明らかにとした発表した。この研究は、同大国際教育交流センターの井奥智大特任助教(常勤)と同大大学院人間科学研究科の綿村英一郎准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「応用心理学研究」に掲載されている。
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ストレスの捉え方は人によって異なるため、サポートするためにはストレスを感じやすい人の特性を理解することが重要だ。心理学ではそのような特性の理解に役立つ研究が行われている。その研究テーマの一つが環境刺激に対し敏感に反応しやすい人を指すHSPだ。HSPは米国の心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、良くも悪くも環境の影響を受けやすい性質を生まれ持った人のこと。全人口の約30%、10人に3人はHSPと考えられている。
HSPはその繊細さから、HSPでない人と比較するとストレスを感じやすいと考えられている。しかし、主に大学生などを対象とした研究でこの考えを裏付ける結果が得られているものの、企業で働く社会人を対象とした研究はさほど多くない。先行研究は社会人を対象としているものの、悲観性といった他の人格特性を考慮していなかった。また、ストレスを抱えやすいというようなHSPのネガティブな側面ばかりに焦点が当てられ、HSPが社会や所属組織にもたらすポジティブな側面にはあまり目を向けていなかった。
HSPの特性が高い社会人ほど疎外されていると感じやすく、ストレスを感じやすい傾向
研究グループは今回、日本国内の企業に勤務している18~81歳の社会人296人を対象に調査を実施。HSP特性と職場でのストレスの関係を調べた。
その結果、まず、同調査参加者の約26%がこのHSP特性の高い社会人に当てはまるとの結果が得られた。また、HSP特有の楽観性や悲観性を考慮しても、HSPの特性が高い社会人ほど疎外されていると感じやすく、ストレスを感じやすい傾向があることが示された。
さらに、HSPの特性が高い社会人ほど、同僚など他の人に共感しやすいことも示唆された。これは、同僚など周囲の人と協調して仕事を進めることができるという意味で、職場にポジティブに作用し得ると考えられる。
企業がHSPの特性を理解することで、ストレスが原因の離職を防げる可能性
職場でのストレスは、職務への不満や感情的疲労などが根底にあると考えられ、早期離職などの原因にもなり得る。企業ではメンター制度などの対策が取られているが、ストレスの捉え方が個人によって異なるため、ニーズに合ったサポートが提供されているとは限らない。
「本研究成果のような実証的な知見により、ストレスを感じやすい人々の特性を理解し、彼らが求めるサポートを明らかにできれば、ストレスが原因の離職を防ぎ、健康と福祉を享受できる職場環境デザインに役立つと期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU