DKDへのSGLT2阻害薬使用は強く推奨も腎臓保護作用は未解明
大阪公立大学は10月30日、SGLT2阻害薬は腎臓の酸素状態を改善し、腎臓を保護する可能性が明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科腎臓病態内科学の森克仁准教授と埼玉医科大学医学部腎臓内科の井上勉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Endocrinology」オンライン速報版に掲載されている。
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糖尿病は透析導入の原疾患の第1位である。透析を防ぐため、腎臓の状態が悪い糖尿病関連腎臓病(DKD)は克服すべき疾患であるが、これまで腎臓に直接有効な薬はなかった。糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は、尿糖排泄を促進し血糖コントロールを改善する。近年の大規模臨床試験の結果より、SGLT2阻害薬は血糖改善作用以上に透析導入を防ぎ、腎臓を守ることが明らかになった。そのため、国内外のガイドラインでは、DKDに対してSGLT2阻害薬の使用が強く推奨されている。しかし、SGLT2阻害薬の腎臓保護作用は未解明なままであった。
SGLT2阻害薬<ブドウ糖再吸収制御<腎臓の酸素化をBOLD MRIで測定
腎臓は心臓に次ぐ酸素消費量の多い臓器で、酸素不足に弱く、低酸素状態になると腎臓病が悪化する。腎臓にはブドウ糖を尿中から再吸収する機能が備わっており、飢餓に苦しめられてきたヒトでは、ブドウ糖の再吸収は防御反応の一つである。しかし、飽食の時代となった現在、肥満や糖尿病が増加し、むしろ尿中のブドウ糖は体外に排出した方が良いというのがSGLT2阻害薬の開発コンセプトである。ここで重要なことは、ブドウ糖の再吸収には多くのエネルギー(ATP)が必要であるということだ。腎臓はブドウ糖を再吸収するために、たくさんの酸素を消費しながらATPというエネルギーをつくる。すなわち、SGLT2阻害薬でブドウ糖の再吸収を適正に管理する(ブドウ糖を捨てる)と、腎臓の酸素化が良くなり、負担がとれる可能性がある。動物実験では、腎臓に微小電極を差し込むことで酸素分圧(酸素量)を測定できるが、ヒトでは不可能だ。
そこで今回の研究では、BOLD MRI(Blood oxygenation level-dependent MRI)という手法を用いて、腎臓の酸素化をMRIで測定した。
2型糖尿病患者14人対象、カナグリフロジン投与で酸素化の改善を確認
2型糖尿病患者14人を対象に、SGLT2阻害薬カナグリフロジン投与前、1回投与後、5日間投与後の酸素量を測定した。その結果、カナグリフロジン投与による酸素化の改善が確認された。
今回の研究の結果から、臨床的に有効性が確立されたSGLT2阻害薬の腎保護機序の一つとして腎臓の酸素化改善の可能性が示された。BOLD MRIは非侵襲的に腎臓の酸素化を計測できるため、腎臓病の機序解明に向けて、また新規治療薬の開発にとっても重要な技術になることが期待される、と研究グループは述べている。
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